[P-KS-34-2] 筋伸張位と筋短縮位における低負荷等尺性トレーニングの即時効果の比較
受動的トルクに着目して
Keywords:筋張力, 筋断面積, 筋力トレーニング
【はじめに,目的】
筋力トレーニングにより筋肥大効果を得るには,メカニカルストレスや代謝ストレスが必要である。メカニカルストレスにおいては随意的な筋収縮により発揮される力に着目されることが多いが,持続的に筋を伸張し筋肥大が生じたことが動物実験で報告されていることから,筋が伸張されて受動的に筋に加わる力もメカニカルストレスとして筋肥大に寄与する可能性がある。ある一定の関節トルクを発揮するとき,対象筋が伸張位となる肢位では他動的な筋の伸張により生じるトルク(受動的トルク)が大きい分,随意的な筋収縮によるトルク(能動的トルク)発揮は小さくて済むが,受動的トルクの小さい筋短縮位では大きな能動的トルクの発揮が必要となる。本研究では,ある一定のトルクを発揮する等尺性トレーニングを筋伸張位と短縮位で行う場合,能動的トルクの大きさは両者で異なるが,筋に加わるメカニカルストレスは同程度となるという仮説を立てた。メカニカルストレスの指標としてトレーニング後の即時的な筋腫脹を用いることで,この仮説を検証した。
【方法】
対象は健常若年者20名(24.5±3.3歳)とし,トレーニングを筋伸張位で行う伸張群と筋短縮位で行う短縮群に無作為に割り付けた。対象筋はハムストリングスとした。トレーニング肢位は背臥位,股90°屈曲位で,伸張群では膝30°屈曲位,短縮群では膝90°屈曲位とした。トレーニング時の発揮トルク(トレーニングトルク)は,両群とも膝90°屈曲位の最大筋力の30%とした。伸張群においては膝30°屈曲位で安静時に生じる受動的トルクとトレーニングトルクとの差分を能動的トルクとして算出した。屈曲群においては膝90°屈曲位では受動的トルクはほぼ生じないと考えられるため,トレーニングトルクはすべて能動的トルクによるものと見なした。トレーニングは多用途筋機能評価運動装置を用い,5秒間の等尺性膝屈曲運動を10回9セット実施した。筋腫脹の指標として,ハムストリングスの筋断面積を介入前,3,6,9セット後に超音波診断装置を用いて評価した。統計学的解析では,群間のトレーニングトルクの比較にMann-WhitneyのU検定,筋断面積の変化の比較に分割プロット分散分析(群×時期)を用いた。
【結果】
トレーニングトルクは伸張群22.9±7.2Nm(そのうち能動的トルク:9.1±5.7Nm),短縮群24.3±12.7Nm(そのうち能動的トルク:24.3±12.7Nm)で群間差を認めなかった。筋断面積の分割プロット分散分析の結果,交互作用はなく,時期のみ主効果を認め(p<0.01),両群ともにセット数増加に伴い筋断面積が増加したが群間差はなかった。
【結論】
同じトルクでの等尺性トレーニングを筋伸張位と筋短縮位で実施した結果,即時的な筋腫脹は同程度生じた。受動的トルクが生じる筋伸張位では,筋短縮位に比べて筋収縮による能動的なトルクの発揮量が小さくても,同程度のメカニカルストレスが得られることが示唆された。
筋力トレーニングにより筋肥大効果を得るには,メカニカルストレスや代謝ストレスが必要である。メカニカルストレスにおいては随意的な筋収縮により発揮される力に着目されることが多いが,持続的に筋を伸張し筋肥大が生じたことが動物実験で報告されていることから,筋が伸張されて受動的に筋に加わる力もメカニカルストレスとして筋肥大に寄与する可能性がある。ある一定の関節トルクを発揮するとき,対象筋が伸張位となる肢位では他動的な筋の伸張により生じるトルク(受動的トルク)が大きい分,随意的な筋収縮によるトルク(能動的トルク)発揮は小さくて済むが,受動的トルクの小さい筋短縮位では大きな能動的トルクの発揮が必要となる。本研究では,ある一定のトルクを発揮する等尺性トレーニングを筋伸張位と短縮位で行う場合,能動的トルクの大きさは両者で異なるが,筋に加わるメカニカルストレスは同程度となるという仮説を立てた。メカニカルストレスの指標としてトレーニング後の即時的な筋腫脹を用いることで,この仮説を検証した。
【方法】
対象は健常若年者20名(24.5±3.3歳)とし,トレーニングを筋伸張位で行う伸張群と筋短縮位で行う短縮群に無作為に割り付けた。対象筋はハムストリングスとした。トレーニング肢位は背臥位,股90°屈曲位で,伸張群では膝30°屈曲位,短縮群では膝90°屈曲位とした。トレーニング時の発揮トルク(トレーニングトルク)は,両群とも膝90°屈曲位の最大筋力の30%とした。伸張群においては膝30°屈曲位で安静時に生じる受動的トルクとトレーニングトルクとの差分を能動的トルクとして算出した。屈曲群においては膝90°屈曲位では受動的トルクはほぼ生じないと考えられるため,トレーニングトルクはすべて能動的トルクによるものと見なした。トレーニングは多用途筋機能評価運動装置を用い,5秒間の等尺性膝屈曲運動を10回9セット実施した。筋腫脹の指標として,ハムストリングスの筋断面積を介入前,3,6,9セット後に超音波診断装置を用いて評価した。統計学的解析では,群間のトレーニングトルクの比較にMann-WhitneyのU検定,筋断面積の変化の比較に分割プロット分散分析(群×時期)を用いた。
【結果】
トレーニングトルクは伸張群22.9±7.2Nm(そのうち能動的トルク:9.1±5.7Nm),短縮群24.3±12.7Nm(そのうち能動的トルク:24.3±12.7Nm)で群間差を認めなかった。筋断面積の分割プロット分散分析の結果,交互作用はなく,時期のみ主効果を認め(p<0.01),両群ともにセット数増加に伴い筋断面積が増加したが群間差はなかった。
【結論】
同じトルクでの等尺性トレーニングを筋伸張位と筋短縮位で実施した結果,即時的な筋腫脹は同程度生じた。受動的トルクが生じる筋伸張位では,筋短縮位に比べて筋収縮による能動的なトルクの発揮量が小さくても,同程度のメカニカルストレスが得られることが示唆された。