The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-25] ポスター(運動器)P25

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-25-2] 荷重スケジュールの延期に伴い痛みの破局的思考が強まった脛骨高原骨折術後患者一症例
反芻・抑うつ・不眠の相互関係について

宮下 創 (独立行政法人地域医療機能推進機構星ヶ丘医療センターリハビリテーション部)

Keywords:脛骨高原骨折, 破局的思考, 不眠

【はじめに,目的】

近年,痛みに対する破局的思考の評価である精神心理学的評価を用いた報告が散見される。今回,骨癒合が遷延し荷重スケジュールの2度の延期に伴い破局的思考が強まった脛骨高原骨折術後患者を担当した。痛みの破局的思考が強まった要因について考察したため報告する。

症例は40歳代男性。職業は大型トラック運転手。バイク事故により右脛骨高原骨折受傷,受傷7日目に観血的整復固定術施行,受傷29日目に回復期病棟へ転棟した。症例の特徴として,痛みに対して敏感であり,自己身体へ過剰に注意を向けてしまう傾向が強かった。また,痛みの情動的及び認知的側面に関する発言が多かったため,精神心理学的評価を実施した。不眠の訴えも強かったため睡眠評価も実施した。


【方法】

評価期間は受傷36日目を初期,1回目の荷重開始予定直前(受傷50日目)をI期,2回目の荷重開始予定直前(受傷64日目)をII期,荷重開始直前(受傷78日目)を最終評価とした。評価は,痛み強度評価はVAS,痛み性質評価はSF-MPQ,精神心理学的評価はPCS,HADS,身体機能評価はWOMAC・膝関節屈曲可動域,行動評価は痛み-行動日誌,睡眠評価はAthens Insomnia Scale(以下,AIS)とした。理学療法は通常の理学療法と痛みに対するセルフケアを実施した。


【結果】

結果は初期→I期→II期→最終の順に記載。VAS(cm)は5.9→0.9→0.3→0.3,SF-MPQは7→2→1→2,PCSは25→29→34→33(反芻:15→18→20→20,無力感:4→0→3→5,拡大視:6→11→11→8),HADSは21→19→23→23(不安:12→9→10→10,抑うつ:9→10→13→13),WOMACは57→54→48→47,右膝屈曲可動域(°)は109.1→116.5→121.1→123.3,AISは12→12→12→11であった。痛み強度や痛み性質評価,身体機能評価は改善を認めた。PCSでは破局的思考を強め,下位尺度の反芻で特に高値を示した。HADSの下位尺度の不安はdoubtful,抑うつはdefiniteであった。睡眠評価は初期からの重度不眠が残存した。問診では復職の不安,復職後の痛みの再発に対する恐怖,夜間の中途覚醒による不眠の訴えを聴取した。


【結論】

反芻は様々なうつ症状と強い関連があり(山本ら。2014),心理的要因が睡眠状況に及ぼす影響として就寝前の認知的活動が重要であり,ネガティブな反芻はうつ状態を引き起こし睡眠状況にも影響すると報告されている(西迫。2010)。本症例において,荷重スケジュールの2度の延期に伴い,夜間覚醒時に復職に対する不安,復職後に生じうる痛みに対する恐怖を繰り返し考えるようになっていった。このように反芻・抑うつ・不眠は相互に影響し合い,悪循環が形成され破局的思考が強まったと考える。今回のような経過をたどる患者は臨床的に少なくないと考えられ,その特徴として自己への過剰な注意が挙げられる。今後の課題は,初回面談時に症例の自己への注意の向け易さや思考傾向を評価し,その結果を関連職種の共通認識として患者に対応する必要がある。