[P-MT-46-2] 腱板断裂術後3ヶ月自動屈曲の可動域低下に影響を与える評価項目の検討
~自動運動開始初期における検討~
Keywords:腱板断裂, 可動域, 自動運動
【はじめに,目的】
我々は先行研究において腱板断裂術後1年に再断裂がなく,かつ日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)が90点の可否に影響を与える術後3ヶ月時の肩関節屈曲可動域はカットオフ値85°と報告した。術後の多くの場合,縫合部保護や疼痛による肩関節の評価制限を受けるため肩関節可動域以外の評価項目の検討を行うことで術後3ヶ月の可動域向上に貢献できると考えた。そこで,本研究の目的は術後3ヶ月自動屈曲の可動域低下に影響を与える自動運動開始初期に関連する評価項目を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院にて2016年2月より2016年7月までに当院肩専門医が腱板断裂と診断し,手術を施行した47例とし,対象の内訳は男性30名,女性17名,年齢64.7±8.2歳であった。断裂サイズは小断裂11名,中断裂36名であり,大断裂・広範囲断裂例は除外した。術後4週間装具装着を行った後,自動運動を開始した。装具を外し,自動運動開始した1週間後(術後5週)における評価を行った。評価項目は夜間痛の有無,肘関節自動屈曲・伸展および手指自動屈曲・伸展が最終域まで痛みなく運動可能の可否,手部浮腫の有無,頸部回旋左右差の有無,腰痛の有無,上肢下垂位における上腕骨回旋肢位(以下,上腕回旋肢位:上肢下垂位での肩甲棘に対する上腕骨の内・外側上顆の回旋肢位が内側に向いている場合を内旋位,平行より外側に向いている場合を外旋位と定義した)の10項目について調査した。また,術後3ヶ月の屈曲角度が85°以上を良好群,85°未満を不良群と定義した。統計学的検定にはSPSSを用いてフィッシャーの正確確率検定を行い,不良群に関連のある項目を抽出した。さらに術前評価項目(疼痛,肩関節屈曲可動域,外旋可動域,外転筋力,JOAスコア,shoulder36各ドメイン)について2群間においてMann-Whitney U検定を用いた。各々,有意水準は5%とした。
【結果】
良好群40名,不良群7名であった。術後3ヶ月における不良群と関連性のあった各項目は夜間痛あり(リスク比:2.4),手指伸展(リスク比:18.4),手指屈曲(リスク比:4.9),肘関節屈曲(リスク比:8.2),肘関節伸展(リスク比:6.1),上腕回旋肢位が外旋位(リスク比:3.3)であった。また,術前の各評価項目は2群間に有意差を認めなかった。
【結論】
術後3ヶ月自動屈曲の可動域低下に影響を与える肩関節自動運動開始初期の評価項目は夜間痛の有無,手指伸展制限および屈曲制限,肘関節伸展制限および屈曲制限,上腕回旋肢位外旋位であった。術後装具装着により末梢循環障害や手指の固有受容感覚の低下を呈することも考えられ,肩関節自動運動開始初期までにこれらの評価が陰性化となるようにアプローチしていく必要があることが示唆された。肩関節自動運動開始後は肩関節の可動域拡大のみならず,手や肘関節のコントロールが可能な状態を早期に獲得する必要があると考える。
我々は先行研究において腱板断裂術後1年に再断裂がなく,かつ日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOAスコア)が90点の可否に影響を与える術後3ヶ月時の肩関節屈曲可動域はカットオフ値85°と報告した。術後の多くの場合,縫合部保護や疼痛による肩関節の評価制限を受けるため肩関節可動域以外の評価項目の検討を行うことで術後3ヶ月の可動域向上に貢献できると考えた。そこで,本研究の目的は術後3ヶ月自動屈曲の可動域低下に影響を与える自動運動開始初期に関連する評価項目を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院にて2016年2月より2016年7月までに当院肩専門医が腱板断裂と診断し,手術を施行した47例とし,対象の内訳は男性30名,女性17名,年齢64.7±8.2歳であった。断裂サイズは小断裂11名,中断裂36名であり,大断裂・広範囲断裂例は除外した。術後4週間装具装着を行った後,自動運動を開始した。装具を外し,自動運動開始した1週間後(術後5週)における評価を行った。評価項目は夜間痛の有無,肘関節自動屈曲・伸展および手指自動屈曲・伸展が最終域まで痛みなく運動可能の可否,手部浮腫の有無,頸部回旋左右差の有無,腰痛の有無,上肢下垂位における上腕骨回旋肢位(以下,上腕回旋肢位:上肢下垂位での肩甲棘に対する上腕骨の内・外側上顆の回旋肢位が内側に向いている場合を内旋位,平行より外側に向いている場合を外旋位と定義した)の10項目について調査した。また,術後3ヶ月の屈曲角度が85°以上を良好群,85°未満を不良群と定義した。統計学的検定にはSPSSを用いてフィッシャーの正確確率検定を行い,不良群に関連のある項目を抽出した。さらに術前評価項目(疼痛,肩関節屈曲可動域,外旋可動域,外転筋力,JOAスコア,shoulder36各ドメイン)について2群間においてMann-Whitney U検定を用いた。各々,有意水準は5%とした。
【結果】
良好群40名,不良群7名であった。術後3ヶ月における不良群と関連性のあった各項目は夜間痛あり(リスク比:2.4),手指伸展(リスク比:18.4),手指屈曲(リスク比:4.9),肘関節屈曲(リスク比:8.2),肘関節伸展(リスク比:6.1),上腕回旋肢位が外旋位(リスク比:3.3)であった。また,術前の各評価項目は2群間に有意差を認めなかった。
【結論】
術後3ヶ月自動屈曲の可動域低下に影響を与える肩関節自動運動開始初期の評価項目は夜間痛の有無,手指伸展制限および屈曲制限,肘関節伸展制限および屈曲制限,上腕回旋肢位外旋位であった。術後装具装着により末梢循環障害や手指の固有受容感覚の低下を呈することも考えられ,肩関節自動運動開始初期までにこれらの評価が陰性化となるようにアプローチしていく必要があることが示唆された。肩関節自動運動開始後は肩関節の可動域拡大のみならず,手や肘関節のコントロールが可能な状態を早期に獲得する必要があると考える。