The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-51] ポスター(運動器)P51

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-51-4] 人工膝関節全置換術の退院時における転倒恐怖感と歩行評価指標との関連
3軸加速度を用いた検討

小宮山 潤1, 山口 真依1, 樋口 和奏1, 藤本 静香1, 渡邉 敬幸2, 太田 隆1, 金丸 晶子1 (1.東京都健康長寿医療センター, 2.公立福生病院)

Keywords:人工膝関節全置換術, 転倒恐怖感, 加速度計

【はじめに,目的】

転倒恐怖感や転倒関連自己効力感は日常の活動量や生活の質を低下させる要因とされている。人工膝関節全置換術(TKA)後は歩行能力改善のためリハビリテーションを実施しているが,転倒恐怖感を有したまま退院となる症例は少なくない。また,近年では歩行をより客観的かつ簡便に評価するために加速度計から得られるデータを用いた歩行計測が散見されている。今回は,退院後の生活で問題となる転倒恐怖感に着目して,従来から用いられている歩行速度に加速度計から得られる評価指標を加えた歩行評価指標と転倒恐怖感との関連を検討した。


【方法】

対象は2015年8月~2016年9月の間に,当院で初回片側TKAを施行した膝OA症例27例(男性6例,女性21例,平均年齢78.7±6.3歳)とした。除外基準は,術前に20m独歩不能,Mini Mental State Examinationが23点以下,膝関節痛以外の理由により歩行困難,転帰先が自宅以外,術中・術後の重篤な合併症,研究に不同意の場合とした。研究デザインは,退院時における転倒恐怖感の有無で2群に分類した横断研究とし,退院時に歩行能力の評価を実施した。歩行評価方法は,加速路と減速路を3mずつ設けた計16mの歩行路を使用し,中間10mにおける靴を装着時の最大歩行速度を採用した。更に,同様の歩行路にて3軸加速度計(Micro Stone社製)を第3腰椎の高さで腰部にバンド固定し,裸足自由歩行における自由歩行速度と加速度データを測定し(山田,2006),3軸加速度計のサンプリング周波数は100Hzとした。計測された加速度波形の5歩行周期を解析に使用し,前後,左右,垂直の各成分毎に歩行動揺性の指標であるRoot Mean Square(RMS),歩行対称性の指標である1ステップ毎の自己相関係数(Step Symmetry:SS),歩行規則性の指標である1歩行周期毎の自己相関係数(Stride Regularity:SR)を求めた。なお,RMSは自由歩行速度の2乗で除し,歩行速度による影響を調整した。統計解析は最大歩行速度とRMS(前後,左右,垂直),SS(前後,左右,垂直),SR(前後,左右,垂直)を転倒恐怖感のあり群となし群の間でMann WhitneyのU検定を用いて比較した。有意水準は5%とし,解析にはSPSS Statistics version 20を用いた。


【結果】

転倒恐怖感有り群は16例(男性4例,女性12例,平均年齢79.4±6.2歳),転倒恐怖感無し群は11例(男性2例,女性9例,平均年齢77.7±6.7歳)であった。転倒恐怖感有り群は無し群に比べ,最大歩行速度が有意に遅く(P<0.05),左右成分のSSが有意に小さかった(P<0.05)。その他の指標は転倒恐怖感有り群と無し群で有意差はなかった。


【結論】

退院時に転倒恐怖感を有するTKA症例は最大歩行速度が遅く,左右方向の歩行対称性が低下している事が示された。一方で転倒恐怖感と歩行には疼痛や筋力等の身体機能との関わりも大きいため,今後は,転倒恐怖感と歩行評価指標が身体機能と関連するかも検討していくことが重要である。