第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-05] ポスター(神経)P05

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-05-2] 促通反復療法とIVESの併用療法(2回/週,訪問リハビリテーション)が有効だった重度片麻痺上肢の一例

福田 貴洸1, 川平 和美2 (1.医療法人樹心会角田病院リハビリテーション課, 2.促通反復療法研究所)

キーワード:麻痺側上肢, 促通反復療法, 電気刺激

【はじめに,目的】

脳卒中患者の麻痺側上肢機能の予後について片麻痺手の回復は4週間までが最大で,脳卒中発症1ヶ月後の時点で測定できるだけの握力がない場合,機能的予後は不良とされている。一方で近年,促通反復療法や電気刺激の利用により,この病期が経過した脳卒中後遺症の麻痺に対する改善効果が示されている。今回,週2回の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)により,促通反復療法と随意運動介助型電気刺激装置(以下,IVES)の併用療法が有効だった重度片麻痺上肢の一例を経験したので報告する。

【方法】

症例は70歳代の男性,左放線冠梗塞による右片麻痺を発症25病日から当院で約2か月の回復期リハビリテーションの後,自宅退院した。退院後は「右手も使って,妻とゲートボールに復帰」を目標に,退院2日後から訪問リハ(40分,週2回)が開始した。訪問リハ開始時,麻痺がBRS上肢III,手指II,下肢V,運動覚・位置覚が9/10,触覚が8/10,握力が測定不可,手部全体の浮腫が目立ち,手指の粗大運動や持続的な運動は困難,上肢麻痺重症度の自己評価スケールであるJikei Assessment scale for Mortor Impairment in Daily Living(以下,JASMID)が18/18点(使用頻度/動作の質),歩行はT字杖歩行自立だった。介入内容は約20分間が右片麻痺上肢に対して促通反復療法(5~7パターン)とIVESの併用,残りの20分が食事動作やゲートボールの実動作練習だった。介入当初,物品操作が困難であった為,随意性の向上を目的に上肢と手指に対し促通反復療法(臥位)とIVES(ノーマル)を20分間併用した。治療直後から横摘みが可能となった為,介入後は持続的な横摘みを課題として提示した。持ち越し効果が確認できたところでIVESをパワーアシストへ変更し,視覚的フィードバック下で更なる随意性の向上を目指したところ,単純な物品操作が可能となりIVESを併用した状態で促通反復療法をより,生活動作に近い座位パターンへ変更した。課題は日常生活の中で麻痺肢の使用頻度が増えるように食事動作の指導と疑似課題を設定した。

【結果】

右片麻痺上肢は,訪問リハ開始8週後にはBRSが上肢III→IV,手指II→IV,握力0→6kg,JASMID 18/18→43/31(点)と向上し,横摘みが可能となった事で袖の操作やスプーンの使用など実用手に近い機能が得られた。また,スティックが握れたことでゲートボールも再開している。

【結論】

本例は発症後3ヶ月の時点での握力が0kgの重度片麻痺で,機能予後不良と予測された。しかし,40分,週2回の訪問リハの中で,促通反復療法とIVESによる選択的電気刺激を併用して,上肢と手指の意図した運動の実現と反復を行なったこと,その麻痺側上肢の随意性向上を実生活で活かすように促したことが,重度麻痺上肢を実用手に近い機能まで改善させたと考えられる。本例の経過は40分,週2回の低頻度でも強度の高い治療を行なえば,従来の常識を超える効果が得られる可能性を示唆している。