The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会 » ポスター発表

[P-NV-20] ポスター(神経)P20

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-20-4] 悪性腫瘍の浸潤や傍腫瘍性神経症候群により一時ADL全介助となるも,屋内歩行可能となり自宅退院した悪性リンパ腫の1症例

佐藤 慶彦1, 本田 憲胤1, 饗庭 明子2, 有馬 靖佳2 (1.公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院リハビリテーションセンター, 2.公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院血液内科)

Keywords:傍腫瘍神経症候群, 悪性リンパ腫, がんリハビリテーション

【はじめに,目的】

がん患者における問題点として,腫瘍の浸潤や,傍腫瘍性神経症候群(以下PNS)による末梢神経障害は,患者のADL低下を引き起こす。本邦においてPNS患者に対するリハビリテーション(以下リハビリ)の症例報告が散見されるが,その数は少なく,特に悪性リンパ腫に関する症例はない。今回,予後不良の悪性リンパ腫による末梢神経障害により,一時ADL全介助となるも,化学療法や理学療法を経て,最終的に補助具歩行近位監視までADL改善し自宅退院を果たした症例を経験したため報告する。

【方法】

70歳,男性。病前ADLは全自立。20XX年8月から腰痛と大腿部屈側の痺れや疼痛,脱力が起こり,複視も出現。9月1日近医で外転神経麻痺と診断されるも,その後も次第に増悪し,下肢脱力により歩行困難,排尿・排便困難,両眼瞼下垂が出現。9月9日当院紹介。頭蓋骨や腰椎など全身の骨転移,骨盤内の腫瘤性病変,腹部大動脈や下大静脈周囲の腫瘤の指摘あり,検査目的に同日緊急入院。DLBCL unclassifiable with features intermediate between DLBCL and BLの診断にて9月17日,化学療法開始。9月25日より理学療法開始。全身状態が安定するまではベッド上の関節可動域運動を中心に実施した。入院期間中,週5,6日,1日1回理学療法を行った。

【結果】

初期評価時のBerthal Index(BI)は5点であった。握力は右側5.8kg,左手は把握動作困難で,両上肢とも挙上は困難であった。両下肢ともにSLR困難であり,右下肢は膝立てが可能であった。四肢体幹にしびれ,特に下肢には疼痛もあり,感覚障害を認めた。四肢腱反射は消失していた。複視は斜台の腫瘤浸潤,四肢体幹の神経症状はPNSとしてのポリニューロパチーによるものとみられた。10月1日から離床開始。10月5日から車椅子移乗実施。化学療法施行の度に感染が起こるものの徐々に神経症状は改善した。12月17日平行棒歩行練習開始。12月21立位保持は近位監視にて可能。12月26日ご家族の介助で移乗可能。20XX+1年1月ピックアップウォーカー使用にて歩行練習開始。3月9日段差昇降練習開始。3月16日自宅退院となる。最終評価時のBIは65点であった。握力(右/左)14.8/11.2kg,MMT両上肢4レベル,右下肢2-4レベル,左下肢2レベルまで改善した。補助具使用にて立ち上がり可能となり,ピックアップウォーカー使用し近位監視にて連続20m歩行可能となった。退院後の現在もリンパ腫は再発せず,デイケアにて理学療法を継続している。

【結論】

本症例では悪性リンパ腫に対する化学療法が奏功し,神経障害の進行停止や改善があったものとみられる。また長期に渡る理学療法により廃用性の機能障害からの改善もADLの改善に寄与したと考えられる。悪性リンパ腫のPNS患者に対しては,原疾患の治療に加え,継続的なリハビリ介入が運動機能・ADLの改善や患者とその家族の精神的なサポートに必要である。