第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-23] ポスター(神経)P23

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-23-3] 車椅子移乗時におけるブレーキ・フットレストの操作管理と歩行予後予測との関連
認知機能評価と比較して

長井 亮祐1, 月成 亮輔1, 菊池 俊明1, 宮前 篤1, 伊藤 修一1, 宮崎 晶子2 (1.市川市リハビリテーション病院理学療法科, 2.市川市リハビリテーション病院言語・心理科)

キーワード:脳卒中, 予後予測, 移乗動作

【はじめに,目的】

脳卒中患者の予後予測に関して,運動機能や日常生活活動を予測因子とした報告が多いが,認知機能を予測因子とした研究は数少ない。脳卒中患者の自立歩行能力を評価する際には,運動機能面だけでなく,認知機能面を加味して評価することが重要であるという報告があり,同じく自立歩行を予測する際にも重要であることが考えられる。しかし,認知機能評価は机上で実施するものが多く,臨床の中で理学療法士が行うことは難しい。そこで我々は,理学療法士が日常臨床場面で簡便に行うことができる評価として,車椅子からの移乗動作時の準備動作(以下,B/F操作管理)に着目した。第一報において,入院から1か月時点のB/F操作管理の可否から退院時病棟歩行自立・非自立を予測できる可能性が示唆されたが,認知機能評価との比較はなされていなかった。本研究の目的は,回復期脳卒中患者を対象として,B/F操作管理と認知機能評価の予後予測の有用性を比較することである。

【方法】

対象は,当院に2014年11月から2016年2月の間に入院した初発脳卒中患者17名(平均年齢66.7±14.1歳,発症から入院までの平均日数27.8±13.9日,平均在院日数148.8±28.6日)とした。除外項目は1)入院時の病棟歩行が自立している,2)状態悪化による転院,3)測定に同意が得られない,4)入院時の移動に車椅子以外の手段を使用している,5)失語症によりMMSEを実施できない,6)TMT-Aを実施できないとした。病棟歩行自立は,病棟ADLでの歩行を基準とし,その判断は多職種からなるチームで話し合い,最終的に主治医が行った。B/F操作管理は,訓練室内で治療台に移乗する際に声かけおよび介助なしで患者自らが車椅子のブレーキとフットレスト操作を行うことが定着しているかを担当PTが判断した。MMSEおよびTMT-Aは,臨床心理士が静かな部屋で評価を行った。いずれも,入院から1か月時点のB/F操作管理の可否,MMSEとTMT-Aの得点を採用した。B/F操作管理の可否およびMMSE,TMT-Aが,退院時の病棟歩行自立を予測可能であるかを陽性的中率・陰性的中率を求めて比較した。なお,MMSE,TMT-Aは,陽性的中率と陰性的中率の積が最も高いカットオフポイントの値を採用した。

【結果】

対象者のうち,退院時に病棟歩行が自立したのは7名,自立しなかったのは9名であった。B/F操作管理の可否から,病棟歩行自立を予測する陽性的中率は77.8%,陰性的中率は100%であった。MMSEは,カットオフポイントは28点となり,病棟歩行自立を予測する陽性的中率は70%,陰性的中率は100%であった。TMT-Aは,カットオフポイントは151秒となり,陽性的中率は33%,陰性的中率は40%であった。

【結論】

B/F操作管理の可否は,認知機能評価よりも退院時病棟歩行自立を予測する的中率が高い値を示した。B/F操作管理の可否は日常的な臨床場面で評価可能であるため,簡便性という点で優れていると考えられる。