[P-SK-01-4] 降段動作時における膝関節内方変位に影響を及ぼす因子について
キーワード:降段動作, 膝内方変位, 性差
【はじめに,目的】
降段動作や立ち上がり時にみられる膝の内方変位(Knee-in)とスポーツ障害との関連性を示した報告は多い。しかし,Knee-inに関しては様々定義があり,原因についても一定の見解が得られていない。本研究では,Knee-inを「静止立位時と比較した時の動作中の支持脚膝関節内方変位」と定義し,降段動作時におけるKnee-inに関与する因子について検討することを目的とした。
【方法】
対象は男性12名(平均年齢:22.3±1.3歳)及び女性15名(平均年齢:21.6±0.7歳)である。動作解析には三次元動作解析装置と床反力計,表面筋電図計測装置を使用し,全てのデータを同期させて取り込んだ。動作課題は,床反力計上に設置された,段差高10cm及び20cmの2条件での降段動作である。降段は右下肢から振り出すよう指示し,動作速度はメトロノームを用いて下段への両脚接地までを1秒で行うように設定し,視線は前方を向くように指示した。十分に練習を行なった後に各条件3回ずつ計測した。右踵部に貼付したマーカーの前後方向の値が静止立位時1秒間の平均値から2SD以上変位した時点を動作開始とし,右足が下段に接地して床反力垂直方向の値が,5Nまたは体重の1%を越えた時点を動作終了とした。
Knee-inの量的指標として,左膝関節外側に貼付したマーカーの前額面上における最大内方変位量(以下,膝内方変位)を求めた。また,Knee-inに関連しうる要因として,降段時の支持脚の下肢関節角度,下肢筋活動(内側・外側広筋,中殿筋,長内転筋),内側広筋に対する外側広筋の筋活動比(VM/VL比),下肢筋力(股外転,内転,膝伸展筋トルク値),舟状骨落下距離を計測した。膝内方変位と各パラメーターとの関係には,各変数の正規性の確認後,ピアソンの積率相関分析またはスピアマンの順位相関分析を用いた。男女の比較には対応のないt検定を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
膝内方変位の平均値は,女性が,段差高10cmで7.0±8.2mm,段差高20cmで10.2±6.8mm,男性が,同様に-3.4±6.8mm,-4.3±6.9mmと,2条件とも女性が有意に大きな値を示した。最大膝内方変位時の股・膝関節肢位は男女ともに一定ではなく,股関節内転-内旋-膝関節内反や股関節内転-外旋-膝関節外反時に最大変位する例が見られた。段差高2条件とも膝内方変位と舟状骨落下距離との間に有意な正の相関がみられた。段差高20cmでは,膝内方変位とVM/VL比との間に有意な負の相関が見られた。男性では段差高20cmで膝内方変位と股内転筋活動及びKnee-in時の股内旋角度との間に有意な負の相関が認められた。
【結論】
降段動時の膝内方変位は女性が有意に大きく,関連要因として,女性では舟状骨落下距離及びVM/VL比,男性では股内転筋活動と股内旋角度が挙げられた。
降段動作や立ち上がり時にみられる膝の内方変位(Knee-in)とスポーツ障害との関連性を示した報告は多い。しかし,Knee-inに関しては様々定義があり,原因についても一定の見解が得られていない。本研究では,Knee-inを「静止立位時と比較した時の動作中の支持脚膝関節内方変位」と定義し,降段動作時におけるKnee-inに関与する因子について検討することを目的とした。
【方法】
対象は男性12名(平均年齢:22.3±1.3歳)及び女性15名(平均年齢:21.6±0.7歳)である。動作解析には三次元動作解析装置と床反力計,表面筋電図計測装置を使用し,全てのデータを同期させて取り込んだ。動作課題は,床反力計上に設置された,段差高10cm及び20cmの2条件での降段動作である。降段は右下肢から振り出すよう指示し,動作速度はメトロノームを用いて下段への両脚接地までを1秒で行うように設定し,視線は前方を向くように指示した。十分に練習を行なった後に各条件3回ずつ計測した。右踵部に貼付したマーカーの前後方向の値が静止立位時1秒間の平均値から2SD以上変位した時点を動作開始とし,右足が下段に接地して床反力垂直方向の値が,5Nまたは体重の1%を越えた時点を動作終了とした。
Knee-inの量的指標として,左膝関節外側に貼付したマーカーの前額面上における最大内方変位量(以下,膝内方変位)を求めた。また,Knee-inに関連しうる要因として,降段時の支持脚の下肢関節角度,下肢筋活動(内側・外側広筋,中殿筋,長内転筋),内側広筋に対する外側広筋の筋活動比(VM/VL比),下肢筋力(股外転,内転,膝伸展筋トルク値),舟状骨落下距離を計測した。膝内方変位と各パラメーターとの関係には,各変数の正規性の確認後,ピアソンの積率相関分析またはスピアマンの順位相関分析を用いた。男女の比較には対応のないt検定を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
膝内方変位の平均値は,女性が,段差高10cmで7.0±8.2mm,段差高20cmで10.2±6.8mm,男性が,同様に-3.4±6.8mm,-4.3±6.9mmと,2条件とも女性が有意に大きな値を示した。最大膝内方変位時の股・膝関節肢位は男女ともに一定ではなく,股関節内転-内旋-膝関節内反や股関節内転-外旋-膝関節外反時に最大変位する例が見られた。段差高2条件とも膝内方変位と舟状骨落下距離との間に有意な正の相関がみられた。段差高20cmでは,膝内方変位とVM/VL比との間に有意な負の相関が見られた。男性では段差高20cmで膝内方変位と股内転筋活動及びKnee-in時の股内旋角度との間に有意な負の相関が認められた。
【結論】
降段動時の膝内方変位は女性が有意に大きく,関連要因として,女性では舟状骨落下距離及びVM/VL比,男性では股内転筋活動と股内旋角度が挙げられた。