第52回日本理学療法学術大会

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[P-YB-16] ポスター(予防)P16

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-16-4] 地域高齢者の慢性疼痛の強さ別にみた身体活動特性の違い

牧野 圭太郎1, 牧迫 飛雄馬1, 土井 剛彦1, 堤本 広大1, 堀田 亮1, 中窪 翔1, 鈴木 隆雄1,2, 島田 裕之1 (1.国立長寿医療研究センター, 2.桜美林大学)

キーワード:慢性疼痛, 身体活動, 地域高齢者

【はじめに,目的】

慢性疼痛を有する高齢者は,痛みを回避しようと過剰に身体活動量を制限させることで心身の虚弱化および痛み自体のさらなる悪化が引き起こされる悪循環に陥りやすいと考えられている。したがって,慢性期では痛みの強さに応じて無理のない範囲で身体活動を維持させることが重要と考えられる。本研究では,慢性疼痛を有する高齢者の身体活動に関する基礎的知見を得るため,大規模横断調査から痛みの強さ別に身体活動特性の違いを検討した。


【方法】

National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesの参加者のうち,2013年度の調査に参加し活動量計による身体活動量評価を実施した地域在住高齢者2,366名(75.7±4.1歳)を分析対象とした。なお,要介護認定を受けている者,認知症,脳卒中,パーキンソン病の既往を有する者は除外した。また,急性疼痛を持つ者,腰または膝以外の部位に痛みがある者,医師による運動制限を受けている者についても分析から除外した。

基本属性として年齢,性別,1日の服薬数,歩行速度,Mini-Mental State Examination(MMSE)を評価した。慢性疼痛は,腰または膝に2ヶ月以上継続した痛みがある場合を慢性疼痛ありとし,痛みの強さ別に3段階で評価した(疼痛なし/軽度の慢性疼痛あり/中等度以上の慢性疼痛あり)。身体活動の指標には,3軸加速度計内臓の活動量計で計測した1日あたりの歩数と強度別の身体活動時間を用いた。

統計解析として,対象者を疼痛なし群,軽度群,中等度以上群に分類し,3群間で基本属性および各身体活動指標を比較した。

【結果】

2,366名のうち,906名(38.3%)が慢性疼痛を有しており,そのうち軽度の慢性疼痛が546名,中等度以上の慢性疼痛が360名であった。慢性疼痛の強さによる一元配置分散分析の結果,MMSEを除く全ての基本属性に有意な主効果が認められた(p<0.01)。各群における歩数の平均値は,疼痛なし群で5,371歩,軽度群で4,770歩,中等度以上群で4,338歩であった。年齢と性別を共変量とした共分散分析および事後検定の結果,歩数および中強度(3METs)以上の身体活動時間に関しては,軽度群と中等度以上群で疼痛なし群よりも少なく(p<0.01),軽度群と中等度以上群の間に有意差はみられなかった。低強度(1.5~2.9METs)の身体活動時間に関しては,中等度以上群は疼痛なし群よりも少なかった(p<0.05)のに対し,軽度群は他の群との間に有意差はみられなかった。


【結論】

慢性疼痛を有する高齢者において,身体活動量は慢性疼痛の強さと関連することが示唆され,慢性疼痛が軽度の者は低強度の活動に関しては疼痛のない者と同程度の活動量が維持されていた。慢性疼痛の強さによって異なる強度の身体活動が制限されることを示した本研究結果は,慢性疼痛を有する高齢者の身体活動の維持促進を目的とした理学療法介入にとって有用な知見を提供するものと考える。