[O-003] 基本チェックリスト「運動機能」項目に関連する因子の検討
Keywords:地域在住高齢者、基本チェックリスト、慢性痛
【はじめに・目的】
厚生労働省は,予防給付の導入にあたってハイリスク状態にある高齢者を抽出する方法として「基本チェックリスト」を開発し,信頼性や妥当性に関してはすでに報告されている.基本チェックリストを用い心身機能の低下を早期に発見することは予防医学的な視点から重要視されている.一方,高齢者では慢性痛を有する者が多く,慢性痛は運動機能低下や転倒など様々な因子に対する負の要因となることは周知の通りである.これまでに基本チェックリストを用いた研究は多くなされているが,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)や慢性痛などとの関連性に関する検証は十分に実施されていない.ロコモや慢性痛との関わりが明らかになれば,介護予防に関するアプローチの手法を検討するための一助となると思われる.そこで我々は,基本チェックリスト「運動機能」項目とロコモ,慢性痛との関連性を検討することとした.
【方法】
対象は,大阪府貝塚市で行われている認知症予防プロジェクトの参加者のうち,65歳以上の地域在住高齢者133名(全例女性,平均年齢72.6±6.7歳)である.分析項目は,基本チェックリスト「運動機能」項目と慢性痛の有無,60歳以降の骨折や変形性膝関節症などの既往歴,ロコモ度テスト(立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25)とした.慢性痛は,「3カ月間を超えて持続もしくは再発する,または急性組織損傷の回復後1カ月を超えて持続する,または治癒に至らない病変に随伴する疼痛」と定義されており,対象者には質問紙を用いてこの定義に該当するかどうかを回答させた.基本チェックリスト「運動機能」項目は,5項目中3項目以上の場合を「運動機能低下」と判断した.統計解析は,χ二乗検定で基本チェックリスト「運動機能」と各項目を比較し,「運動機能低下」の有無を従属変数,有意差が認められた項目を独立変数,年齢を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した.有意水準は5%とした.
【結果】
133名の対象者のうち,運動機能低下あり群は39名,運動機能低下なし群は94名であった.2群比較の結果,ロコモ度テストの立ち上がりテスト(P<0.05),ロコモ25(P<0.001)既往歴(60歳以降の骨折)(P<0.05),慢性痛(P<0.05)の因子が有意差を認めた.年齢を調整したロジスティック回帰分析を行った結果,運動機能低下には慢性痛が有意に関連していた(OR=3.226, CI=1.553-6.702).
【結論】
本研究の結果から,基本チェックリスト「運動機能」と慢性痛の有無に関連を認めた.慢性的な疼痛経験による疼痛認知の変化や回避行動,精神機能,身体機能の低下を招くような一連の変化を表したfear-avoidance modelの関与が推察されるため,基本チェックリストを用いた「運動機能」の評価により低下を認めた場合には,慢性痛の評価を並行して実施することで早期の予防的アプローチの一助となりえると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
認知症予防プロジェクトの参加者には,本研究の目的や個人情報の扱いについて,利益相反について,自由意志での参加であることを十分に説明し,書面に同意を得た.なお,本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:OKRU-A016)を受けて実施した.
厚生労働省は,予防給付の導入にあたってハイリスク状態にある高齢者を抽出する方法として「基本チェックリスト」を開発し,信頼性や妥当性に関してはすでに報告されている.基本チェックリストを用い心身機能の低下を早期に発見することは予防医学的な視点から重要視されている.一方,高齢者では慢性痛を有する者が多く,慢性痛は運動機能低下や転倒など様々な因子に対する負の要因となることは周知の通りである.これまでに基本チェックリストを用いた研究は多くなされているが,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)や慢性痛などとの関連性に関する検証は十分に実施されていない.ロコモや慢性痛との関わりが明らかになれば,介護予防に関するアプローチの手法を検討するための一助となると思われる.そこで我々は,基本チェックリスト「運動機能」項目とロコモ,慢性痛との関連性を検討することとした.
【方法】
対象は,大阪府貝塚市で行われている認知症予防プロジェクトの参加者のうち,65歳以上の地域在住高齢者133名(全例女性,平均年齢72.6±6.7歳)である.分析項目は,基本チェックリスト「運動機能」項目と慢性痛の有無,60歳以降の骨折や変形性膝関節症などの既往歴,ロコモ度テスト(立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25)とした.慢性痛は,「3カ月間を超えて持続もしくは再発する,または急性組織損傷の回復後1カ月を超えて持続する,または治癒に至らない病変に随伴する疼痛」と定義されており,対象者には質問紙を用いてこの定義に該当するかどうかを回答させた.基本チェックリスト「運動機能」項目は,5項目中3項目以上の場合を「運動機能低下」と判断した.統計解析は,χ二乗検定で基本チェックリスト「運動機能」と各項目を比較し,「運動機能低下」の有無を従属変数,有意差が認められた項目を独立変数,年齢を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した.有意水準は5%とした.
【結果】
133名の対象者のうち,運動機能低下あり群は39名,運動機能低下なし群は94名であった.2群比較の結果,ロコモ度テストの立ち上がりテスト(P<0.05),ロコモ25(P<0.001)既往歴(60歳以降の骨折)(P<0.05),慢性痛(P<0.05)の因子が有意差を認めた.年齢を調整したロジスティック回帰分析を行った結果,運動機能低下には慢性痛が有意に関連していた(OR=3.226, CI=1.553-6.702).
【結論】
本研究の結果から,基本チェックリスト「運動機能」と慢性痛の有無に関連を認めた.慢性的な疼痛経験による疼痛認知の変化や回避行動,精神機能,身体機能の低下を招くような一連の変化を表したfear-avoidance modelの関与が推察されるため,基本チェックリストを用いた「運動機能」の評価により低下を認めた場合には,慢性痛の評価を並行して実施することで早期の予防的アプローチの一助となりえると考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
認知症予防プロジェクトの参加者には,本研究の目的や個人情報の扱いについて,利益相反について,自由意志での参加であることを十分に説明し,書面に同意を得た.なお,本研究は大阪河﨑リハビリテーション大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:OKRU-A016)を受けて実施した.