第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学1

[O] 一般口述1

Sat. Dec 14, 2019 1:00 PM - 2:00 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:橋立 博幸(杏林大学 保健学部理学療法学科)

[O-004] 地域在住高齢者における社会的サポート源と認知機能との関連:1年間の縦断研究

*野口 泰司1,2、野嶌 一平3、井上 倫恵4、杉浦 英志4 (1. 国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部、2. 名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野、3. 信州大学大学院医学系研究科保健学専攻、4. 名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻)

Keywords:社会的サポート、縦断研究、認知機能

【はじめに・目的】
認知症の予防について、豊かな社会的関係性の重要性が示されつつある。社会的関係性の機能的な側面として社会的サポートがあるが、認知機能への影響について、家族や友人などといったサポート源による違いを縦断的に検討した報告は限られる。そこで本研究は、地域在住高齢者を対象に社会的サポート源と認知機能との関連を1年間の縦断研究により明らかにすることを目的とした。
【方法】
研究デザインは前向きコホート研究である。対象は、会場招へい型の高齢者機能健診にベースライン調査および1年後のフォローアップ調査に継続して参加した者のうち、65歳未満、認知症・精神疾患を有する者、移動が自立でない者、認知機能の情報が欠損である者を除外した121名を対象とした。認知機能は、Montreal Cognitive Assessment日本語版(MoCA-J)を使用し、教育歴を補正して評価した。社会的サポートは、自記式質問紙にて「同居の家族」、「別居の家族や親族」、「近隣住民・友人」の3種類のサポートの有無について評価した。統計解析にあたって、欠損値は多重代入法により補完し、目的変数をフォローアップ時のMoCA-Jスコア、説明変数をサポート源別の社会的サポートの有無、共変量を年齢、性別、BMI、世帯構成、所得、疾病、抑うつ、手段的ADL、歩行速度、身体活動量、ベースライン時のMoCA-Jスコアとして、線形回帰分析を行った。
【結果】
最終解析対象者の平均年齢は73.9歳(SD=5.0歳)であった。線形回帰分析の結果、ベースライン時の近隣住民・友人の社会的サポートがフォローアップ時のMoCA-Jスコアと正の関連を認めた(β=1.23, SE=0.44, p<0.01)。その他のサポート源の社会的サポートは有意な関連は認められなかった(同居の家族:β=0.28, SE=1.19, p=0.81; 別居の家族や親族:β=0.51, SE=0.43, p=0.24)。また、近隣住民・友人の社会的サポートのうち、情緒的サポートの提供による影響が最も大きかった。
【結論】
近隣住民・友人の社会的サポートの授受があることは、1年後の認知機能に保護的な関連を示した。本研究は、地域包括ケアシステムにおける「互助」による健康保護効果を示唆するものであり、通いの場における地域住民どうしの助け合いの機会の創出が認知機能を保つ可能性が考えられる。本研究は、理学療法士が通いの場など地域における認知症予防を推進する上での基礎資料となると考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、名古屋大学生命倫理委員会の承認のもと実施し、対象者には研究についての説明を十分に行い、参加についての同意を書面にて得た。本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。