第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

病院・施設

[O] 一般口述9

Sat. Dec 14, 2019 5:40 PM - 6:40 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:大垣 昌之(社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部)

[O-052] 回復期病棟における23か月の見学回数調査からみえた、転院時のFIM重症度分類と自宅復帰率の関連

*烏谷 香蓮1、今田 健1 (1. 社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院)

Keywords:見学回数、自宅復帰率、FIM

【はじめに、目的】
第5回本学会において、家族らによる理学療法の見学回数が多いほど自宅復帰率が高いことを報告した。本調査の目的は、当院へ転院時に日常生活動作に介助を要した重症例においても、見学回数が多ければ自宅復帰する確率が高いのかを明らかにすることである。当院において、転院時のFunctional Independence Measure(以下、FIM)重症度と見学回数および自宅復帰率の関連性を調査した。
【方法】
対象は、2017年4月20日から2019年3月15日までに当院から自宅に退院した症例と、自宅以外に退院した症例の計347例、および症例の家族らであった。
方法は、症例ごとに家族らによる理学療法時間の見学の有無を毎日聴取し、延べ見学回数から月単位の平均見学回数を算出した。電子カルテより対象症例の転院時FIM運動項目、FIM認知項目、在院日数、転帰先を後方視的に調査した。FIM運動項目は78点以上の群(以下、運動軽度群)、39点以上78点未満の群(以下、運動中等度群)、39点未満の群(以下、運動重度群)に分類し、FIM認知項目は24点以上の群(以下、認知高群)、24点未満の群(以下、認知低群)に分類した。各群における人数割合と自宅復帰率、転帰先ごとの平均見学回数を算出し、比較検討した。
【結果】
延べ見学回数は1731回であった。人数割合は、運動軽度群17.3%、運動中等度群55.9%、運動重度群26.8%、認知高群68.0%、認知低群32.0%であった。自宅復帰率は、運動軽度群100%、運動中等度群94.8%、運動重度群61.3%、認知高群94.9%、認知低群69.4%であった。月単位の平均見学回数は、自宅退院となった運動軽度群0.6回、運動中等度群1.6回、運動重度群3.4回、認知高群1.3回、認知低度群2.9回であった。自宅以外への退院となった運動中等度群0.7回、運動重度群1.0回、認知高群0.8回、認知低群1.0回であった。
転院時においてFIM運動項目が39点未満または、FIM認知項目が24点未満で自宅退院した症例は、自宅以外に退院した症例と比較して月単位の見学回数が多かった。
【結論】
家族に対してADLの介助指導が必要な場合は、介助量が多いほど練習が必要になり、入院中から家族が参加するプログラムを計画し実践していくことが求められている。本調査において、転院時FIM運動項目が39点未満、またはFIM認知項目が24点未満の重症例であっても、1か月あたりの見学回数が多ければ自宅復帰する確率が高いことが分かった。
自宅復帰にあたっては家族の協力が不可欠であり、自宅でのイメージを共有することが大切であるといわれている。見学をきっかけに家族指導へと発展する重要性が示唆された。当院では、家族指導を行う頻度が部署内で浸透しており、理学療法時間において毎日のように見学する家族がいる。見学頻度の多い家族らを対象に、どのようなアクションをとったらよいかを考えることで、自宅復帰率を向上させる一助となることが期待される。

【倫理的配慮、説明と同意】
本調査はヘルシンキ宣言に基づいて実施し、当院における倫理委員会の承認を受けた。実施にあたり得られたデータは研究以外の目的には使用せず、個人情報の漏えいを防止した。公表については個人の名前などが一切わからないよう匿名化し、プライバシーの保護について十分配慮した。任意の参加であるため、調査途中であっても本人の意思でいつでも中断でき、それにより一切の不利益を受けないことを十分説明したうえで参加の協力を求めた。対象者より口頭ならびに書面にて同意を得たうえで実施した。