[P-107] 好酸球性多発血管炎性肉芽種症による神経症状を呈した高齢女性の自宅における屋内自立歩行獲得に向けた介入
~入院から退院後の段階的でスムーズな介入によりトイレ動作自立に至った症例~
Keywords:退院支援、好酸球性多発血管炎性肉芽種症、多発性単神経炎
【はじめに・目的】
好酸球性多発血管炎性肉芽種症(以下,EGPA)は,好酸球の増加を伴い血管炎症状が出現する.神経症状として多発性単神経炎を認める場合が多く,後遺症を残す例が報告されている.
今回,EGPAを発症し,下垂足による歩行障害を呈する症例を担当した.自宅退院希望の強い本症例に対し,歩行能力の再獲得に向けた装具療法とスムーズな退院支援により歩行自立に至ったため報告する.
【方法】
対象症例は80歳代の女性である.夫との二人暮らしで,入院1か月前まではテニスに通うなど活動的であった.入院14日前より感冒症状を認め,入院2日前から左上下肢の脱力が出現した.その後,四肢遠位部の脱力が進行し,歩行困難となり入院に至る.理学療法は,第2病日より実施した.初回評価において,MMT(右/左)は前脛骨筋1/0,手背屈2/2であった.表在感覚は四肢遠位部が中~重度鈍麻であった.Barthel Index(以下,BI)は5点でADL低下が著明であったが,ご本人から悲観的な表出はなく,早期自宅退院を希望していた.そこで,屋内歩行能力の再獲得を目標とし介入をすすめた.運動療法実施時は,好酸球数と炎症値を指標として病勢を確認し,負荷量を調整した.第7病日から歩行練習を開始した.歩容は下垂足を呈しており,オルトップAFOを早期より導入した.その後,第35病日から家屋評価と退院前カンファレンスによる退院支援を開始した.その際,家族の介助負担が問題点となり,屋内自立歩行の獲得を目標とした訪問リハビリが必要と判断された.第49病日に退院し,退院4日後より訪問リハビリ開始となった.
本症例の評価指標は, MMT,BI,歩行自立度とし,入院時(第2病日),退院時(第49病日),訪問リハビリ終了時(第199病日)を比較した.
【結果】
介入経過での好酸球数と炎症値の上昇はなく,神経症状の増悪はなかった. MMT(右/左)は,前脛骨筋1/0(入院時)→2/0(退院時)→4/2(訪問リハビリ終了時)であった.歩行能力は,困難(入院時)→オルトップAFO着用・キャスター付き歩行器歩行軽介助(退院時)→装具非着用でのキャスター付き歩行器歩行自立(訪問リハビリ終了時)であった.BIは,5点(入院時)→60点(退院時)→75点(訪問リハビリ終了時)であった.
訪問リハビリは,目標であった自立歩行の獲得を達成し,トイレ動作の自立に至り終了となった.
【結論】
本症例は,多発性単神経炎の後遺症である下垂足の残存から,歩行障害による家族の介助負担が懸念された.そこで早期の装具療法と,家屋評価や退院前カンファレンスでの退院支援を図ったことで,本症例の希望であった自宅退院が実現した.加えて,退院時は自立歩行が困難であったが,退院後の訪問リハビリへ円滑に移行したことにより,段階的に自立歩行の獲得とADLの向上に至ることが可能となったと考えられる.
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に基づき,本人と家族に報告の趣旨を説明し同意を得た.
好酸球性多発血管炎性肉芽種症(以下,EGPA)は,好酸球の増加を伴い血管炎症状が出現する.神経症状として多発性単神経炎を認める場合が多く,後遺症を残す例が報告されている.
今回,EGPAを発症し,下垂足による歩行障害を呈する症例を担当した.自宅退院希望の強い本症例に対し,歩行能力の再獲得に向けた装具療法とスムーズな退院支援により歩行自立に至ったため報告する.
【方法】
対象症例は80歳代の女性である.夫との二人暮らしで,入院1か月前まではテニスに通うなど活動的であった.入院14日前より感冒症状を認め,入院2日前から左上下肢の脱力が出現した.その後,四肢遠位部の脱力が進行し,歩行困難となり入院に至る.理学療法は,第2病日より実施した.初回評価において,MMT(右/左)は前脛骨筋1/0,手背屈2/2であった.表在感覚は四肢遠位部が中~重度鈍麻であった.Barthel Index(以下,BI)は5点でADL低下が著明であったが,ご本人から悲観的な表出はなく,早期自宅退院を希望していた.そこで,屋内歩行能力の再獲得を目標とし介入をすすめた.運動療法実施時は,好酸球数と炎症値を指標として病勢を確認し,負荷量を調整した.第7病日から歩行練習を開始した.歩容は下垂足を呈しており,オルトップAFOを早期より導入した.その後,第35病日から家屋評価と退院前カンファレンスによる退院支援を開始した.その際,家族の介助負担が問題点となり,屋内自立歩行の獲得を目標とした訪問リハビリが必要と判断された.第49病日に退院し,退院4日後より訪問リハビリ開始となった.
本症例の評価指標は, MMT,BI,歩行自立度とし,入院時(第2病日),退院時(第49病日),訪問リハビリ終了時(第199病日)を比較した.
【結果】
介入経過での好酸球数と炎症値の上昇はなく,神経症状の増悪はなかった. MMT(右/左)は,前脛骨筋1/0(入院時)→2/0(退院時)→4/2(訪問リハビリ終了時)であった.歩行能力は,困難(入院時)→オルトップAFO着用・キャスター付き歩行器歩行軽介助(退院時)→装具非着用でのキャスター付き歩行器歩行自立(訪問リハビリ終了時)であった.BIは,5点(入院時)→60点(退院時)→75点(訪問リハビリ終了時)であった.
訪問リハビリは,目標であった自立歩行の獲得を達成し,トイレ動作の自立に至り終了となった.
【結論】
本症例は,多発性単神経炎の後遺症である下垂足の残存から,歩行障害による家族の介助負担が懸念された.そこで早期の装具療法と,家屋評価や退院前カンファレンスでの退院支援を図ったことで,本症例の希望であった自宅退院が実現した.加えて,退院時は自立歩行が困難であったが,退院後の訪問リハビリへ円滑に移行したことにより,段階的に自立歩行の獲得とADLの向上に至ることが可能となったと考えられる.
【倫理的配慮、説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に基づき,本人と家族に報告の趣旨を説明し同意を得た.