第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム

[SY] シンポジウム

2019年12月15日(日) 14:00 〜 15:50 第1会場 (テルサホール)

地域理学療法学のエビデンス
講師:松本大輔、岡前暁生、
   石垣智也
司会:池添冬芽

[SY-02] 施設利用高齢者に対する運動療法のエビデンス

*岡前 暁生1 (1. 兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室)

65歳以上の高齢者数は,2018年には3,492万人に達し,要介護要支援認定者数は,2018年時点で644万人(65歳以上高齢者の18%),要介護3以上の高者数は225万人(同6%)であり,今後の高齢者人口の増加に伴い,要介護要支援認定者数は増加することが予想される。
このような状況のもと,介護老人福祉施設,介護老人保健施設などの介護保険施設は13,000施設を超えている。しかし,今後の要介護認定者数の増加に伴い,地域によっては施設が足りない状況が予想され,地域に沿った施設の整備が必要となっている。運動療法を始めとした種々の取り組みによって利用者の要介護度の重度化を予防し,限られたケアスタッフの負担を抑え,介護老人保健施設などからの家庭復帰率を増やすことが重要となる。
施設利用高齢者は,加齢,慢性疾患,認知障害,栄養不良,社会的関与の低さなどが,機能低下の予測因子になるとされている。機能低下は利用者や施設の特徴により,異なるスピードで進行する可能性があり,施設で行う運動療法は,現在の機能状態だけに注目するのではなく,機能低下のリスクとなる複数の要因を踏まえたうえで実施していく必要がある。
その効果検証には,個人レベルだけでなく施設レベルの影響についても,機能変化を評価する研究においては考慮されるべきであることから,多くの施設で行われた介入試験の効果を系統的にみていく必要がある。運動療法は施設利用者のADLや歩行能力を改善する可能性があるが,転倒・骨折を低下させるがどうかは明らかになっておらず,アウトカムによって効果は異なっている。そこで,今回は施設利用高齢者を対象にした運動療法の効果について,多施設で行われた介入試験をまとめたいくつかのシステマティックレビューやメタアナリシスの内容を中心に,運動療法の効果をADL,歩行能力,筋力,バランス,柔軟性,精神心理機能,認知機能,転倒予防などのアウトカム別に紹介する。