13:00 〜 13:20
[4D-01] 未災の子どもを対象とした語り継ぎの場のデザイン
宮城県石巻市の伝承演劇「いのちのかたりつぎ」の参与観察から
キーワード:Disaster Storytelling, Post-disaster generation, Theatre performance
本発表の目的は、大規模自然災害を経験していない子どもを対象とした演劇による語り継ぎの成果と課題を明らかにし、語り継ぎの場のデザインを提案することである。事例として東日本大震災の最大の被災地である宮城県石巻市の演劇「いのちのかたりつぎ」を参与観察した。インタビューデータ等の質的分析の結果、(1)観客にとっての伝承演劇は災害伝承の意義の再確認になっており、証言をフィクションにすること、具象的な表現を避ける事、構成のバランスといった3つの仕掛けが見出された。また(2)一部の未災の子どもにとっては震災のイメージを具体化し、理解を深める行動につながっていたが、演じるプロセスとの関連性は確認できなかった。(3)ステークホルダー間の演劇への意味付けは矛盾しており、参加者や保護者にとっては「表現の楽しみ」、観客や社会的には「災害伝承」と捉えられていた。長期的な語り継ぎに向けた改善策として、社会課題と関わる芸術活動の先行研究を参照しつつ、「語る/聞く」ことと「演じる/観る」の観点から既存の防災学習や戦争の記憶継承の取組を整理し、3つの語り継ぎの場のデザイン「発信型」「リサーチ型」「共創型」を提案した。