第67回日本ウイルス学会学術集会

会長挨拶

 ウイルス学研究の活動が、社会の中で行われている以上、基礎研究であれ応用研究であれ、社会との接点なしに存在することはできません。研究者自身が、意識するしないにかかわらず、研究で得られた成果は直接的にもまた間接的にも社会に還元されて行きます。我々ウイルス研究者が、これまで何を成し遂げ社会に還元したか、将来的にいかに社会に還元されていくか(あるいはその可能性があるか)を、立ち止まって考え明確にしていくことは、ともすれば忘れてしまいがちのことですが、研究を遂行するにあたり重要な視点と考えます。
 このことは、決して近視眼的に社会にすぐ役立つような研究を行うことを勧めているわけではありません。一人一人の研究者が、自分が研究する意味・意義をきちんと理解し、一般の方々(社会)に明確に説明できることが、研究者として活動する基本であると考えるからです。本学術集会を、我々ウイルス研究者が自身の研究の意義を社会の中で考えてみる一つの機会ととらえてもらいたいと思います。副題としてあげた“ウイルス学が成し遂げたこと、これからなすべきこと”は、ウイルス学全体に対する問いかけであるとともに、個々の研究者の自分自身への問いかけでもあります。

 

第67回日本ウイルス学会学術集会
 会長 倉根一郎
(国立感染症研究所・前所長(名誉所員))