第28回近畿臨床工学会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション1
排痰補助装置の効果的な臨床使用と今後の展望

2022年10月9日(日) 09:00 〜 10:30 第2会場 (Zoom)

座長:大野 進(滋賀県立総合病院)

[PD1-3] IPV療法と加温加湿 在宅人工呼吸管理中の小児にIPV療法と加温加湿方法の変更を行った一例

*岡野 安太朗1、越智 裕之1、二木 理恵1、濱坂 秀一1、田上 敦朗2 (1. 国立病院機構 医王病院 臨床工学技士、2. 同 呼吸器内科)

【はじめに】
長期人工呼吸器使用のTPPV患者において排痰は重要視されている。当院では重症心身障害児において、MI-E(機械的咳介助)やHFCWO(高頻度胸壁振動)、体位変換の組み合わせで排痰を促すが、肺炎や無気肺になることがある。そこで多種職による呼吸カンファレンスにて肺炎や無気肺に至った患児に対しIPV( Intrapulmonary Percussion Ventilator)療法の導入を2013年2月より2018年3月までに7名に実施した。基本設定として駆動源は酸素もしくは圧縮空気、作動圧は25〜36psi、パーカッション頻度はEASY~HARD、使用時間は合計20分間とした。
しかし、在宅人工呼吸管理中の小児で頻回に入退院を繰り返し、内視鏡+IPV+理学療法を行ったが効果は乏しく、人工呼吸器の回路の構成と加温加湿を見直すことで、在宅移行した症例を経験したので報告する。
【症例提示】
低酸素性虚血性脳症、4歳女児。自発呼吸がなく気管切開下での終日人工呼吸管理。2016年X月に肺炎で他院による加療、5ヶ月後に左肺炎が確認され当院に入院した。気管切開チューブはカフ無しで、人工呼吸器はTrilogy100パッシブ回路と加温加湿器はPMH 1000を使用していた。抗菌剤に加え排痰目的に、内視鏡+IPV+理学療法となった。
【経過】
IPVは、作動圧:32psi、駆動頻度:EASY~HARD、駆動ガス:圧縮酸素or圧縮空気、加湿は生理食塩水、施行時間20分とした。IPV開始から1週間経過したが、肺炎の改善はなく粘性痰が強かった。IPV療法を実施しても改善が見られなかったため、人工呼吸器と加温加湿器をPB840とPMH7000+に変更し、気管切開チューブはカフ付に変更した。変更2日目より痰の形状は軟化し、肺炎も改善傾向となった。在宅移行時は、人工呼吸器と加温加湿器をTrilogy100アクティブPAP回路とPMH7000+とした。
【結語】
粘性痰の場合、気管切開チューブや人工呼吸器の回路構成でIPVや理学療法の効果が変わる。そのため、加温加湿方法は痰の粘性に合った方法で行うことが重要である。