日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[A] 防除(物理的・化学的・その他)

2024年3月30日(土) 09:00 〜 11:30 A会場 (橘)

10:00 〜 10:15

[A-29] 振動によるキノコバエ類の行動制御とシイタケ栽培の害虫防除への応用

◯高梨 琢磨1、Avosani Sabina1,2、小林 知里1,3、向井 裕美1 (1. 森林総合研究所、2. フリブール大、3. 東北大)

昆虫は物体を伝わる振動を検知して行動の停止などの捕食回避行動をおこすことから、振動による行動制御を利用した害虫防除の効果が複数種で示されている。演者らは、振動によりシイタケの害虫であるツクリタケクロバネキノコバエの行動が制御されることを明らかにした。幼虫は、20Hzから3000Hzの周波数の振動に対して収縮等による驚愕反応および行動を停止するフリーズ反応を示した。また、800Hz等の振動により幼虫の摂食が抑制された。さらに、幼虫の成長は800Hzよりも高周波の振動で抑制され、羽化率が顕著に低下した。続いて、磁歪式振動発生装置(東北特殊鋼(株))を棚に設置し、メッシュで覆ったシイタケ菌床におけるメス成虫の産卵と次世代の幼虫の成長に与える振動の制御効果を検証した。その結果、羽化が抑制されたことから、振動により幼虫の摂食・成長阻害だけでなく産卵阻害が生じた可能性も考えられた。この振動による成長阻害は、ナガマドキノコバエの幼虫でも同様に観察された。現在、シイタケの原木栽培施設においてキノコバエ類等害虫に対する振動の防除効果を検証しており、その予備的結果も報告する。