日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[A] 共生微生物

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:45 A会場 (橘)

09:00 〜 09:15

[A-35] 青色光毒性を用いた人為選抜が駆動したDrosophila melanogasterにおける"Acetobacter共生菌-脂質代謝に関する表現型"の進化

◯髙田 悠太1、西塔 心路3、大坪 和香子1、布施 直之2、市之瀬 敏晴3,4、谷本 拓3、堀 雅敏1 (1. 東北大院・農、2. 東北大院・薬、3. 東北大院・生命、4. 東北大・学際科学フロンティア研究所)

青色光の連続的な照射は昆虫に対して毒性を発揮する。我々は、キイロショウジョウバエを青色光毒性によって選抜することで、青色光に対して高い適応性をもつ系統を確立した(以下、選抜系統)。選抜系統雌成虫の表現型として、以下2点の特徴がみられた。1.体重が重く、脂質含量が高い。2.中腸が長く、宿主の脂質代謝に関連すると考えられるAcetobacter共生菌の含量が高い。選抜/非選抜系統間の腸内細菌叢にほとんど違いはなく、菌叢の99%以上が単一のAcetobacter共生菌(Acetobacter persici)であった。感染実験では、無菌化した選抜系統において体重減少と青色光毒性に対する感受性向上がみられた。また、無菌化個体に選抜系統由来の腸内容物を経口投与し、腸内細菌を再感染させると、体重増加と適応性の回復がみられた。系統/有菌無菌状態間の成虫におけるRNA-seq解析をおこなったところ、選抜系統では有菌特異的に脂質分解や輸送に関する遺伝子の発現量が低下していた。以上より、選抜系統ではAcetobacter共生菌を介した脂質の蓄積が生じていること、Acetobacter共生菌-脂質代謝に関する表現型が青色光に対する適応性に寄与している可能性を見出した。