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[A-41] IS増幅進化実験によるラボ大腸菌から高度な共生細菌への進化
多くの昆虫類の共生細菌では、自由生活性から共生関係への進化過程において、挿入配列(insertion sequence、IS)の爆発的な増加を伴うゲノム組み換えが頻繁に進行し、これによってゲノム縮小および高度な相互依存が促進されるという仮説がある。チャバネアオカメムシの中腸後部は共生器官に特殊化し、生存に必須なPantoea属の共生細菌を保有する。このようなダイナミックな共生進化の過程と機構を実証的に理解するために、チャバネアオカメムシの本来の共生細菌を、人工的に多コピー数のISをゲノム中に蓄積した大腸菌に置換して、継代維持することで共生細菌に進化させるというIS増幅進化実験系を開発した。IS進化大腸菌株では、ISのコピー数が世代を経て着実に増加するのが観察された。いくつかの進化系統では、羽化率の上昇、体色改善など、宿主適応度の向上が見られた。また、IS増幅に伴って大規模なゲノム構造の変化が同定され、世代間やコロニー間で多様なゲノム構造を示した。さらに、IS進化大腸菌株では培養性の低下、資化能力の低下などの共生細菌的な性質がみられた。すなわちIS増幅進化実験において、ラボ大腸菌から高度な共生細菌への進化を実験室で再現することができた可能性がある。