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[B-07] イヌマキの葉に潜るMakivora属(チョウ目:ハマキガ科)の日本からの1新種
日本産モグリヒメハマキガ族は38属216種が知られるが、いまだ種多様性の解明は不十分であり、属間の系統関係についても多くが未解明である。本族に属するMakivora属はマキヒメハマキMakivora hagiyai Oku, 1979の1種からなり、本種の幼虫はイヌマキやナギ(マキ科)の種子に穿孔することが知られている。本属は、雄の触角基部にくぼみや突出した後翅ひだなどの特徴を有するが、これらの特徴を共有するいくつかの属との系統関係は明らかとなっていない。演者らは、イヌマキの葉に潜るマキヒメハマキに似たモグリヒメハマキガ族の不明種を見出した。そこで、交尾器形態を含む形態比較による種同定を行うとともに、日本産本族の各属を網羅的に含めた分子系統樹を作成し、マキ科を寄主とするモグリヒメハマキガ族2種の系統的位置の検討を行った。その結果、本種はMakivora属の未記載種であると結論付けられた。さらに、分子系統樹からは、本属がMetacosma属と姉妹群を形成することが示された。Metacosma属は世界から7種が記載され、幼虫がマツ類の冬芽に穿孔する種が知られる。球果植物を利用することや、他の属にくらべて共有する形質が多いことからも、両属の系統関係は妥当であると考えられた。