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[B-14] 好白蟻性種ハネカクシにおける飛翔筋の喪失
生活史の少なくとも一部でシロアリの社会に依存して生活する好白蟻性昆虫は、生物間相互作用を介した種や形態の多様化を理解する上で重要な生物群である。しかし、好白蟻性昆虫は採集が困難である上に飼育法も確立されていないため、その生態学的な知見は極めて限られている。このような生物の生態を推測する上で、運動に不可欠な筋肉の形態情報は非常に有用である。そこで本研究では、複数の好白蟻性系統が含まれるヒゲブトハネカクシ亜科 (甲虫目:ハネカクシ科) を対象に、X線マイクロトモグラフィーを用いて、移動分散に関わる胸部筋肉形態を観察した。結果として、対象とした3族7属7種の好白蟻性種とこれらに近縁な自由生活性種の筋肉形態の比較により、本亜科における一般な胸部筋肉構造が初めて明らかになると共に、本研究で用いた好白蟻性種は、揚力を生み出すための主要な飛翔筋が全ての種でほぼ完全に失われており、飛翔能力を持たないことが分かった。この筋肉の喪失パターンは、収斂形態や後翅の有無に関わらず、自由生活性種と好白蟻性種の間で有意に異なっていた。また、これまでにトラップによる採集などで飛翔することが知られる好白蟻性種でも飛翔筋の喪失が確認されたことから、後天的に飛翔筋が失われる可能性が示唆された。