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[B-33] サバクトビバッタにおける密度依存的な繁殖システム
集団生活は多くの利益をもたらすが、同時に雌雄間・同性内の争いなどのコストも伴う。雌は実効性比の偏りのために雄から頻繁にハラスメントを受け、性的対立が激しくなることが予想される。生息密度が変化し、ときおり群れる動物がどのようにこれらの問題を管理しているかはよくわかっていない。これらの点を明らかにするため、サハラ砂漠に生息するサバクトビバッタを対象に、高密度下で群生相化した集団および低密度下の孤独相の繁殖行動を調査した。その結果、群生相化したトビバッタは雌雄いずれかに性比が偏った集団を形成し、産卵直前の雌が雄の集団(レック)に飛来し、交尾・産卵していた。雌に性比が偏った集団では交尾は見られず、卵巣発達中であった。卵巣発達中の雌は別居することで雄からの不要なハラスメントを避け、オスはオス間の雌を巡る競争が高まるが、産卵直前の雌に出会えるためガードする期間を短くできるメリットがあると考えられた。一方、孤独相は卵巣の状態に関わらず、交尾していた。これらの結果は、本種は密度依存的に繁殖行動を変え、群生相化した雌雄はそれぞれ集団別居することで、性的対立によるコストを減少させ、雌雄それぞれの性的欲求を同時に満たしていることを示唆している。