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[B-34] ナケルクロアブラバチは雌雄産み分けをどのような情報から判断しているのか?
ハチ目昆虫の多くは半倍数性決定システムにより雌雄が決定されるため、母蜂は交尾時に受け取った精子を貯精嚢に貯めておき、産卵時に卵を受精させるかどうかで子の性比を調整することができる。寄生蜂における寄主の資源価値とそれに産卵すべき子の性決定の関係は進化生態学のモデル例として古くから考えられてきた命題である。しかし、現在に至るまで寄生蜂が寄主の状態に応じて”適応的に”反応していることは知られているが、”どうやって”寄主の状態を判断しているのか、という至近要因についてはほとんど解明されていない。ナケルクロアブラバチEphedrus nacheri Quilisは複数の亜科を含む極めて多くのアブラムシ類に寄生する内部寄生性の飼い殺し型寄生蜂であるが、若齢幼虫の寄主には雄を産み、齢期が進むにつれて雌を産む確率が高くなる。次世代虫の体サイズは主に寄主サイズで決まるため適応的な反応であるが、アブラムシ種間で比較すると必ずしも大きな寄主に雌を産んでいる訳ではなく、体サイズそのものを判断材料にはしていない。寄主の種間比較及び物性試験機による測定結果からは本寄生蜂の産み分け判断には寄主アブラムシの体表面の硬さが用いられていることが示唆される。