日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月30日(土) 09:00 〜 11:30 B会場 (萩)

10:30 〜 10:45

[B-35] 捕食寄生者が寄主に運ばれるのは攪乱環境への適応か?:飛べない寄生蜂クロハラカマバチの繁殖関連形質に寄主の齢期と性別が及ぼす影響

◯西谷 光平1、三田 敏治2 (1. 九大院・生資環・昆虫、2. 九大院・農・昆虫)

寄主の飛翔分散はその捕食寄生者の移動に間接的に寄与する場合がある。一部の飛べないカマバチ類は,自身が寄生している寄主成虫に運ばれて長い距離を移動できる.不安定な環境に生息する彼らにとって移動分散は生存に重要な要素だが,寄主の成虫,特に相対的に小さいオス成虫は次世代の繁殖の点で好適な寄主ではないかもしれない.そこで,演者らはセジロウンカモドキの若虫にクロハラカマバチを産卵させて飼育し,繁殖能力に対する寄主の齢期と性別の影響を調べた.カマバチの発育所要日数・卵巣小管数・後脚脛節長などを比較した結果,成虫から脱出した個体は若虫から脱出した個体よりも発育日数が長くなり,寄主が若虫やメス成虫の場合よりオス成虫の場合に体サイズが小さくなる傾向が見られた.これらを総合すると,成虫に寄生する割合が増えると増殖率が低下すると考えられた.本種の若虫―成虫寄生は、繁殖と不適な環境からの逃避の間のトレードオフを背景に、両掛け戦略として発達した可能性がある.