日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月30日(土) 09:00 〜 11:30 B会場 (萩)

11:00 〜 11:15

[B-37] 小笠原諸島における外来生物が在来昆虫に与える影響と対策の現状

◯岸本 年郎1 (1. ふじのくにミュージアム)

世界自然遺産に指定されている海洋島・小笠原諸島では、これまでに1418種の昆虫が確認されており、そのうち固有種は403種(固有率28.4%)で、独特の昆虫相・群集が形成されている(岸本・未発表)。一方で、様々な侵略的外来種が侵入し、在来昆虫類に大きな影響を与えている。グリーンアノールの捕食影響が顕著で、諸島固有種であるオガサワラシジミを絶滅に追い込んだ可能性が高いことや、父島・母島ではハナバチ類をはじめ多くの訪花昆虫を絶滅・減少させ、昆虫群集のみならず、送粉生態系にも大きな影響を与えている。森林を形成する樹木のなかにも、アカギやトクサバモクマオウのように優占化することで、植生が単純化し、昆虫の生息に影響を与えるものがある。生態系基盤を破壊するノヤギは父島を除く各島で根絶が完了しているが、聟島列島や南島では、既に森林が崩壊しており、森林の再生が課題となっている。また近年、陸生のヒモムシが土壌性の甲殻類や昆虫類に大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきている。
こうした問題に対して、各種の保全策が進められており、小笠原は外来生物対策が日本で最も進んでいる地域と言っても良いが、課題は山積しており、さらなる調査研究と技術開発が必要である。