日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:15 B会場 (萩)

09:00 〜 09:15

[B-39] オベリスク姿勢postureは放熱ポーズpose
―サーモグラフィー観察による検証―

◯富田 尚道1 (1. 元 群馬県公立中学教諭)

_トンボのオベリスク姿勢は,尾の先端を太陽の方向に向け.直射日光にさらされる体表面積を最小にしてオーバーヒートを防ぐ行動とされる.しかし,複数種で,しばしばこの説明から外れる姿が観察される.
 オベリスク姿勢と体温の関係を把握するために、可視画像とサーモグラフィーを組み合わせ,屋外と屋内における個体の行動を記録・分析した.
 屋外で,ミヤマアカネが傾いたオベリスク姿勢をとったとき,胸部表面温度と尾の角度が関係し、胸部表面温度が高いほど尾の角度が高くなった。暗室内で,複数種が飛翔直後にほぼ垂直もしくは傾いたオベリスク姿勢をとった.すべての個体で、胸部表面温度が低下するにつれて尾を上げる角度が徐々に小さくなった.胸部温度は背側から腹側に向かって低下し,熱は腹側に籠りやすかった.原因は飛翔筋の構造にあると考えられる.
 オベリスク姿勢は直射日光への露出を減らす行動とは異なったはたらきを持つことが示唆された.オベリスク姿勢(posture)は,飛翔筋の過剰な熱を胸部腹側から放散するためのポーズ(pose)である可能性が高い.