日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:15 B会場 (萩)

09:45 〜 10:00

[B-42] キイロショウジョウバエの個体群動態において遺伝的多様性が果たす機能

◯上野 尚久1、高橋 佑磨1 (1. 千葉大・院・理)

近年、生物多様性の産業への応用が期待されている。生態学では、生物多様性が生態系機能や群集構造、個体群動態に及ぼす非相加的な影響(多様性効果)を明らかにしてきた一方で、そのような生態的動態の遺伝基盤の理解が進みつつある。しかし、多様性効果の方向性を決定づける遺伝子の多様性についての検証は始まったばかりであり、多様性効果を効果的に応用できる段階にはない。本研究では、多様性効果に対して機能する遺伝子の特徴を理解するために、生態的動態における多様性効果の遺伝基盤を検証する方法を提案する。ゲノムが公開されているキイロショウジョウバエ系統を多数用い、各系統の単独集団と2系統を混合した集団を作成した。2つの栄養条件において、卵から成虫まで飼育したのち、生存した成虫個体から乾燥重量を測定することで、各集団の生産性を評価した。各組み合わせの多様性効果を算出し、この効果と塩基多様度に基づいた集団内多様度との関係を調べることで、多様性効果に貢献する遺伝子の多様性を探索した。多様性効果に貢献する遺伝子は、多様性効果の方向性や栄養条件ごとに異なり、その特徴も異なっていた。本研究の結果を踏まえて、より高い生産性を生み出すためには、どのような個体群を成り立たせることが重要かを議論したい。