日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:15 B会場 (萩)

10:30 〜 10:45

[B-45] 捕食回避戦略の異なるアゲハチョウ類幼虫における微生息環境選択の違い

◯仁平 岳登1、鈴木 紀之1 (1. 高知大学)

隠蔽色の生物は体色を背景の葉などに似せている一方で、マスカレードの生物は枝や鳥糞といった捕食者の食べ物でない物体に似せている。捕食回避効果を高めるこれら2つの異なる戦略に応じて、個体は適切な微生息環境を選択し、それに応じて生活史を進化させていると考えられる。しかし、野外でこのような見た目と微生息環境選択の関係を実証した研究は少ない。そこで本研究では、カンキツ類を食樹とするナガサキアゲハとナミアゲハの幼虫を対象に、野外における微生息環境とそれに関連する生活史形質を調査した。ナガサキアゲハの中齢幼虫は緑色をしており隠蔽的であると考えられる一方で、ナミアゲハの中齢幼虫は白と黒の模様としており鳥の糞に似せたマスカレードとして機能していると考えられる。ナガサキアゲハはナミアゲハに比べて幼虫が樹木のより幹に近く開空度の低い位置に静止していた。このことから、隠蔽的なナガサキアゲハの幼虫は枝葉によって周囲が覆われている微環境を選択し、鳥糞に似たナミアゲハの幼虫はより目立つ微環境を選択していると考えられる。また結果から、産卵場所選択・卵サイズ・幼虫サイズといった形質もそれぞれの捕食回避戦略に応じて進化していると推測された。