日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月31日(日) 13:30 〜 16:00 B会場 (萩)

13:45 〜 14:00

[B-49] ヒメトビウンカ幼虫の落下後行動 ―うまく着水して天敵から逃れられるか

◯松原 慧1 (1. 道総研・道南農試)

一部の昆虫は、植物等から落下するとき、空中で姿勢を制御して脚から着地する。これにより落下に伴うリスクを軽減できると考えられてきたが、その適応的意義を検証した例は少ない。本研究では、イネの害虫であるヒメトビウンカ幼虫に着目した。本種は、イネ上の天敵から跳躍して逃げるが、その後水面に落下してアメンボ類等に捕食される場合がある。水面での捕食リスクを軽減するためには、落下した個体は速やかにイネに復帰する必要がある。脚から着水すればイネへ速やかに復帰できるが、崩れた姿勢で着水した場合は水の表面張力に囚われて復帰に時間を要すると考えられる。そこで、まず本種が水面へ落下したときの着水姿勢を記録し、次に脚からの着水が落下後に遭遇する天敵からの逃避に寄与するかを検証した。その結果、死亡個体を落下させると96%の個体が背面部から着水したが、生きた個体の84%は脚から着水した。このことから、本種は空中で姿勢を制御して脚から着水すると考えられた。また、脚から着水した個体は、しなかった個体よりも水面の天敵からの逃避成功率が高い傾向にあった。以上の結果から、ヒメトビウンカ幼虫は脚から着水することで、水面への落下後のリスクを軽減できると考えられた。