日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月31日(日) 13:30 〜 16:00 B会場 (萩)

14:30 〜 14:45

[B-52] アリグモは、擬態モデルのアリ種に反応して行動を変える

◯橋本 佳明1、遠藤 知二2、山崎 健史1、兵藤 不二夫3、市岡 孝朗4、MELENG Paulus5、GUMAL Melvin6 (1. 兵庫県立大学、2. 神戸女学院大学、3. 岡山大学、4. 京都大学、5. Forest Department Sarawak、6. Sarawak Forestry Corporation)

熱帯ではアリ類とともに、アリ擬態するハエトリグモ科アリグモ属(Myrmarachne)にも高い種多様性が見られる。アリグモ各種は特定のアリ種にそっくりに擬態するだけでなく,通常,その擬態モデルの縄張り内にテント状の巣網を作って生息している。このことは,アリグモが擬態モデルを識別している可能性を示唆している。M. assimilisはツムギアリに擬態し,その縄張り内に生息するアリグモである。ツムギアリは侵入者に対して腹部を上げる攻撃姿勢を示すが,M. assimilisはこの攻撃姿勢も行動擬態する。そこで、我々はM. assimilisにツムギアリ(擬態モデル),トゲアリ(非擬態モデル),非擬態ハエトリグモ(捕食者)を対面させて攻撃姿勢を示すか否かの観察実験を,ボルネオ島のランビル・ヒル国立公園において実施した。その結果、M. assimilisはトゲアリと非擬態ハエトリグモには攻撃姿勢を示すのに対し,ツムギアリの接近には行動を変化させ,回避行動を示すことがわかった。ここでは、アリグモが擬態モデルを識別している可能性を報告するともに、巣網でオスグモによる交尾前ガードや子グモの育児,集団営巣をするアリグモ属種多様化における進化的意義についても考察する