日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 害虫管理・IPM(畑・果樹)

2024年3月29日(金) 13:30 〜 17:00 C会場 (白橿1)

16:00 〜 16:15

[C-20] 誘殺板を用いた防除が石垣島のミカンコミバエ種群侵入個体群に与えた影響

◯楠本 みさき1、本間 淳1,2、久岡 知輝1,2 (1. 沖縄県病害虫防除技術センター、2. 琉球産経株式会社)

ミカンコミバエ種群Bactrocera dorsalis complexの雄は性成熟前にメチルオイゲノール(ME)に誘引されるため、MEと殺虫剤を染みこませた誘殺板を用いた雄除去法が世界的に広く実施されている。沖縄県でも、この方法により1986年の根絶を成し遂げたが、小笠原諸島では、雄除去法のみでは根絶することができなかった。その理由として、誘殺板への誘引性の低下と、殺虫剤抵抗性の二つが考えられている。そこで本研究では、誘殺板による継続的な防除にもかかわらず、侵入後約1年にわたって発生が続いた個体群を用い、上記2つの要因がどのように影響していたのかを明らかにすることを試みた。そのために、2021年に石垣島で発生した侵入直後(A系統)と、同一の場所で数ヶ月間誘殺板にて防除され続けた後(B系統)からそれぞれ飼育系統を立ち上げ、誘殺板を設置した網室内で、誘殺板への誘引率、生存率及び交尾率を比較した。実験の結果、誘殺板への誘引率はB系統が有意に高かったものの、誘引されても生存していた個体の割合も有意に高かった。一方で、交尾率は、系統間に有意な差はなかった。以上の結果から、少なくともこの侵入個体群においては、誘殺板による継続的な防除により殺虫剤抵抗性が高くなった可能性が考えられた。