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[C-28] イネ科植物に対するイネカメムシの寄主適合性
イネカメムシはイネ科のみに寄生し,イネを含むいくつかのイネ科植物を吸汁することが知られているが,本種の生育にどれくらい適しているか調べた例は少ない。本研究では,イネ出穂期以降に水田周辺で繁茂する植物に対する本種の寄主適合性を調べるため,イネ科植物8種を用いて幼虫の生存・発育を調査した。野外から採取したイネ科植物の穂を,水の入った15 ml容器に挿し,25℃条件下でイネカメムシ2齢幼虫を放飼し4日後に生存率および3齢まで発育した個体の割合を調べた。その結果,イネ,イヌビエ,メヒシバでは生存率が77~91%,3齢到達率が51~76%であったのに対し,アワでは生存率は80%,3齢到達率は38%であった。また,オヒシバ,エノコログサ,カラスムギ,シマスズメノヒエでは6~39%が生存していたものの3齢到達率は0%であった。次にイネ,メヒシバ,アワの穂を用いて2齢幼虫から飼育を行ったところ,いずれも成虫まで発育が認められ,累積羽化率はイネで66%,メヒシバで66%,アワで48%であった。このことから,水田で発生した幼虫がイネの登熟や収穫等により本種発育に適した餌が不足した場合でも,周辺のイネ科植物に移動し発育,羽化して越冬成虫となり,翌年の発生源となりうる可能性が示された。