日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 害虫管理・IPM(水田)

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 C会場 (白橿1)

09:30 〜 09:45

[C-29] イネカメムシ雌成虫の羽化後日数と卵巣の発達程度との関係

◯田中 千晴1、平江 雅宏2 (1. 三重県農業研究所、2. 農研機構・植防研)

近年,関東以西の水田で増加するイネカメムシは年1化とされるが,本種の繁殖に関する生態は不明な点が多い。本研究では水田での産卵消長を解明するため,長日条件で飼育した雌成虫を用いて羽化後の卵巣の発達過程を調査した。供試虫には龍ヶ崎個体群を25℃16L8D条件で累代飼育した系統を用いて,羽化0~21日後および40日以上後における雌成虫の卵巣の発達程度を解剖により観察した。卵巣は安江ら(2022)の方法を参考に発育有無と成熟卵の有無により,未発育,卵形成中,蔵卵中に分類した。雌成虫の交尾は羽化4.2日後以降,産卵は羽化13.7日後以降に認められ,交尾嚢の着色や肥大が観察された。交尾の有無にかかわらず,羽化0~7日後には卵巣は発達しているが,成熟卵はほぼ認められなかったため,この間に卵形成が進むと考えられた。産卵を開始した羽化14日後と21日後には卵形成中と蔵卵中の個体がほぼ1:1で混在した。このことから,羽化14日後以降の雌成虫は産卵と卵形成を繰り返すことが示唆された。また,羽化40日以上経過した雌成虫の29.2%は蔵卵中であり,産卵可能な状態にあることが示された。長日条件での産卵開始時期の結果から,三重県で8月上中旬に羽化した第1世代成虫は8月中下旬に産卵可能になると予想された。