9:00 AM - 9:15 AM
[C-38] オオスズメバチの幼虫は”鳴き”続ける
社会性膜翅目の幼虫は、ワーカーからの世話なしに成長することはできない。さらに、社会性スズメバチは、育房の中で幼虫が成長するため、自ら移動することもない。しかし、一部のスズメバチでは、幼虫がワーカーからの養育をただ待つだけでなく、餌を求める音を発する。主にVespa属の幼虫は、育房の内側の壁に大顎を擦り付けることで、”ガリガリ”という音を出す。幼虫がこの音を出すためには頭部の前後運動が必要で、エネルギーを消費する行動である。さらに、音は天敵を含むさまざまな対象に受容される情報であるため、いつそのシグナルを発するかは、コロニー全体の適応度に関わる。そこで本研究では、オオスズメバチを対象に、幼虫がいつガリガリ音を発するかを明らかにするため、光条件、1日の中の時間、幼虫の空腹度を変化させ、行動観察を行った。ワーカー不在下であっても、幼虫はガリガリ音を発しており、コールの頻度に光条件や昼夜の時間帯、そして空腹度の影響はなかった。さらに、幼虫にコオロギを給餌した後、咀嚼が終わって数分ほど経過すると、ほとんどの個体はガリガリ音を発することが分かった。オオスズメバチの幼虫は、常に餌を求めるコールを行っており、コールを止めるのは咀嚼中のみであった。