日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 社会性昆虫

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:15 C会場 (白橿1)

09:30 〜 09:45

[C-40] チャイロスズメバチ(Vespa dybowskii)の警報フェロモン成分の同定

◯西村 正和1、久保 良平1、小野 正人1,2 (1. 玉川大・ミツバチ科学、2. 玉川大・院・農)

チャイロスズメバチ(Vespa dybowskii)は,モンスズメバチ(V. crabro)及びキイロスズメバチ(V. simillima)の巣を乗っ取る社会寄生性のスズメバチである.今回,本種の働きバチの毒液中の揮発成分のGC/MS分析,並びにGC/EAD解析を行ったところ,3-Methyl-1-butanol(3M1Bol),2-Nonanone(2None),2-Nonanol(2Nol)の3成分に対し働きバチが触角レベルで反応を示すことが確認された.それらの3物質について,野外の巣を用いて警報フェロモン活性試験を実施したところ,3M1Bol及び2Noneの提示時には巣上の働きバチが僅かに反応を示すのみであったのに対し,2Nol提示時には巣上及び巣内の働きバチによる哨戒飛行が直ちに解発された.また,2Nol及びこれら3成分の混和物に対する働きバチの反応は,同種の毒液への反応と同等であった.以上より,本種の警報フェロモンの主要な活性物質は2Nolであることが示され,他の2物質は補助的な効果を持つことが示唆された.ここで,3M1Bolはキイロスズメバチの働きバチの触角においても反応性が認められており,ホストと寄生者間における警報フェロモン交叉活性の観点からも興味深いと言えよう.