日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 社会性昆虫

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:15 C会場 (白橿1)

10:15 〜 10:30

[C-43] クロマルハナバチの脳の特殊化:ドーパミン濃度のカースト差とその役割

森上 絢加1、◯佐々木 謙1 (1. 玉川大・農)

社会性昆虫のカーストには外部形態から行動に至るまでの特殊化が見られる.脳のカースト分化は各カーストの行動を創り出す重要な性質である.マルハナバチ類においても,カースト間で体サイズの違いや行動の分化が見られる.クロマルハナバチのカースト間で羽化直後の脳内生理を比較すると,女王で脳内ドーパミン濃度が高い.そこで本研究ではクロマルハナバチにおいてドーパミンが女王の行動にどのように寄与しているのかを明らかにするために,羽化後8日齢個体の脳内アミン濃度とドーパミン受容体遺伝子発現量をカースト間で比較し,ドーパミンや受容体薬物の投与による行動試験を行った.その結果,女王におけるドーパミンとオクトパミンの脳内濃度はワーカーよりも有意に高かった.一方,4種類のドーパミン受容体遺伝子の発現量については,女王のBigDOP1発現量がワーカーよりも有意に低かった.ドーパミン投与により歩行活性や飛翔活性が上昇し,ドーパミン受容体アンタゴニスト投与によって飛翔活性が低下した.さらにアンタゴニスト投与によって未交尾女王の交尾受入活性が低下した.このようにドーパミンには女王の交尾行動に関係する運動活性を高める作用があり,女王で高い脳内ドーパミン濃度の役割が示唆された.