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[C-46] アミメアリにおけるアリー効果
密度と個体適応度の間には多くの生物で関係が認められ、餌や棲み場所をめぐる種内競争を反映した負の密度依存性が一般的である。一方、密度と適応度が正の関係を示すアリー効果と呼ばれる現象も知られている。アリは多くの個体が共同生活する真社会性昆虫であるため、アリー効果の可能性が議論されているが実証研究は少ない。そこで今回、女王がおらずワーカーが単為生殖するアミメアリでアリー効果を調べた。成虫数10匹、40匹、120匹、480匹のからなる実験室内コロニーを作り餌を十分与え30日間の飼育の後、成虫生存率、ブルード生産数のコロニーサイズ依存性を調べた。生存ワーカー率、卵生産効率、幼虫生産効率のいずれも統計学的に有意な正のコロニーサイズ依存性が確認された。結果は演者らの知る限りアルゼンチンアリに次いでアリのおける2例目のアリー効果である。アリー効果の至近メカニズムは、(1)有性生殖生物における配偶効率の低下と(2)群れ生活に依存する生物におけるパフォーマンスの低下が議論されるが、単為生殖種の本種では(1)は当てはまらない。(2)の効果は、繁殖や採餌などで個体間に協力がある場合に発生すると言われ、コウモリやサルなどで報告があるが、今後本種でその詳細な機構の解明が求められる。