日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 社会性昆虫

2024年3月31日(日) 13:30 〜 14:30 C会場 (白橿1)

13:30 〜 13:45

[C-47] オセアニアに分布拡大したフタモンアシナガバチの生態的特性

◯土田 浩治1、佐山 勝彦2、諸岡 歩希3 (1. 岐阜大学、2. 森林総合研究所、3. 茨城大学)

フタモンアシナガバチは1979年にニュージーランドに侵入定着が確認された後、1999年にはオーストラリアでも採集され、分布を拡大している過程であると考えられる。侵入生物はその原産地と侵入先で生態的特性が変化する事が知られており、その遺伝的な背景を探るには好適な研究材料と考えられる。今回は、これまでのサンプルに加えてオーストラリアと日本の東北地方や北海道のサンプルも加えて分析した結果を報告する。採集したサンプルから12マイクロサテライト遺伝子座について遺伝子型を決定した。これらの遺伝子型から集団解析を行い、それと平行してコロニー内の血縁度も測定した。主な結果は3つである。(1)オーストラリアの集団構造はニュージーランドや日本のものとは独立していた、(2)日本の集団構造は、ニュージーランドとオーストラリアと比較して、地域性が豊富であり、九州地方と類似した個体群が山形県と北海道で検出された、(3)巣内血縁度はニュージーランドとオーストラリアで有意に低下していた。これらの結果は、オーストラリアへは日本から直接に侵入したことを示唆しており、さらに、侵入に伴うボトルネックを経験し、巣仲間認識機構の閾値が低下し、他巣由来の個体がドリフトによって加わっていることを示唆していた。