日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 有用昆虫・昆虫機能利用

2024年3月29日(金) 09:00 〜 11:15 D会場 (白橿2)

09:15 〜 09:30

[D-02] 鶏糞を飼料としたアメリカミズアブ幼虫飼育

◯藤田 弥佳1、安田 哲也1、霜田 政美2、小林 徹也1 (1. 農研機構、2. 東京大学)

腐食性昆虫として知られるアメリカミズアブ(Hermetia illucens)は食品残渣のみならず家畜糞を含む幅広い食性が特徴である。幼虫は栄養価に優れ、畜産・水産飼料などへの活用が期待されている。一方、養鶏場から排出される鶏糞は、一部は肥料として活用されるものの、産業廃棄物として処理される場合も多い。鶏糞を飼料としてミズアブ幼虫を生産できれば、価格高騰や輸入困難な状況にある養殖や家畜飼料の代替原料となるだけでなく、産業廃棄物の削減にも役立つ。鶏糞を飼料とした加工用ミズアブ幼虫の飼育のため、安定した生産と高収量のための飼育方法を検討した。
 まず乾燥鶏糞や醗酵鶏糞など数種類の市販鶏糞を飼料としてミズアブ幼虫の発育を試したところ、いくつかの製品で成虫まで発育した。中でも、成育期間や幼虫体重などの比較で乾燥鶏糞が優れていた。さらに、乾燥鶏糞を用いた場合の飼料の水分率、飼料量、幼虫数、幼虫回収の時期及び方法などを試行し、乾燥鶏糞6.5kg当たり180g程度の終齢幼虫を収穫できた。鶏糞飼料の削減率は乾重で30.6であり、食品残渣飼料の30-40程度を確保した。鶏糞はミズアブ幼虫の餌として十分に利用可能であることが示された。