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[D-14] 新規侵入昆虫ツマジロクサヨトウはアワヨトウのスペシャリスト寄生蜂カリヤコマユバチにとって evolutionary trap か?
ある地域に新規に侵入した昆虫に対して、在来の寄生蜂類がそれを寄主として利用できないにも関わらず誘引されたり、産卵したりする現象が知られ、これをevolutionary trapという。2019年以降、南日本を中心に新大陸原産のツマジロクサヨトウ(以下ツマジロ)が侵入、定着し、イネ科草原や畑でアワヨトウなどの在来チョウ目昆虫と混棲している。本研究では、アワヨトウを寄主とする幼虫寄生蜂カリヤコマユバチ(以下カリヤ)にとって、同所的に生息する新規侵入昆虫ツマジロが evolutionary trap となりうるか検証した。室内試験の結果、カリヤはツマジロに対してほぼ100%の割合で反応し、産卵行動を示した。しかし、産卵後のツマジロ幼虫からカリヤが脱出する例は皆無だった。一方で、同じくイネ科草原に生息し、ヨトウガ類を寄主とする在来ジェネラリスト寄生蜂ギンケハラボソコマユバチがカリヤと共にツマジロ幼虫に共寄生すると、極めて低い確率ではあるがカリヤが脱出する例が観察された。以上のことから、ツマジロはカリヤにとって適応度を下げるevolutionary trapである一方で、本来の寄主であるアワヨトウがいない条件下においては共寄生を介して繁殖可能性を残す代替寄主となりうる可能性が示唆された。