16:45 〜 17:00
[D-23] DIPA-CRISPR法を用いたタイリクヒメハナカメムシのゲノム編集技術の開発
タイリクヒメハナカメムシは微小な農業害虫を捕食する天敵として施設栽培において利用されているが、その効果は不安定であることが多い。この問題を解決するうえでゲノム編集による育種が有用と期待される。しかし、本種のメスは植物組織内に産卵するため、初期胚に注射する従来のゲノム編集法が適用できない。そこで本研究では、成虫に注射するゲノム編集法(DIPA-CRISPR法)を用いて本種のゲノム編集を試みた。昆虫の複眼の着色に必須な遺伝子cinnabarを標的として、様々な羽化後日数のメス成虫にガイドRNAとCas9を注射し、次世代G0におけるゲノム編集された個体の割合を調べた。その結果、羽化1日後に注射することでG0におけるゲノム編集効率が最も高くなった(約45%)。本種の野生型は複眼が黒色であるのに対し、ゲノム編集によって複眼の一部が赤色になったG0個体が得られた。さらに交配実験を行うことにより、この変異が次世代に受け継がれることが確かめられ、鮮やかな赤色の複眼を持つcinnabarノックアウト系統を樹立することに成功した。以上の結果からDIPA-CRISPR法が本種に適用可能であることが示され、ゲノム編集によって本種の天敵製剤としての性能を向上させる道が拓かれた。