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[D-32] わかってきたイネカメムシの行動生態
近年、イネカメムシによるイネの被害が全国的に問題になっている。本種は成虫で越冬し、7月頃から水田に現れて穂を加害するが、越冬後から水田に移動するまでの生態は不明なところが多い。演者らはこの期間に当たる5~7月の行動生態を飼育条件下で調べた。2023年5月に兵庫県内の水田の林縁部で越冬成虫を採集し、農技センター屋外(加西市)に置いた越冬環境を模した飼育ケース内に放飼した。観察には主にケース側面に設置した定点カメラを用い、昼夜連続で1~4分間隔で撮影した画像を解析した。結果、越冬成虫は5月から活動していたが、その時間帯は夜間のみであった。6月中旬までの活動のほとんどが徘徊行動で、その個体割合も低かったが、日没時の気温が25℃を上回った6月27日以降はほとんどの個体が活発に飛翔行動を示すようになった。県内の水田では、7月3日以降に本種の初発が確認されており、この時期の気温上昇が飛翔活性を高め、越冬場所からの移動を促したと考えられた。飛翔行動は19~24時頃に観察されており、農技センター内のライトトラップにおける本種の誘殺時刻とほぼ一致していた。一方、24時以降は植物体上で吸汁する個体が多く観察され、夜間行動において移動・分散と定着・吸汁といった行動パターンを持つことが示唆された。