日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 生理学・生化学・分子生物学

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 D会場 (白橿2)

09:00 〜 09:15

[D-34] トマトキバガの低温耐性:室内試験での検討

◯松倉 啓一郎1、世戸口 貴宏1 (1. 農研機構・植物防疫研究部門)

トマトキバガTuta absolutaは南米原産の小型のガであり、幼虫がトマト等のナス科作物を加害する。2021年に九州で国内での初発生が確認されて以降、2022年には西日本を中心に初発生が、2023年には東北や北海道での初発生がそれぞれ確認され、侵入後わずか2年間で国内の広範囲に侵入している。本種の国内への定着リスクを検討するため、本研究ではトマトキバガの低温耐性を室内実験で調査した。熊本県内で捕獲した個体群の累代飼育系統を用い、幼虫と蛹、成虫をそれぞれ10℃と5℃で15日間維持すると、いずれも成虫の生存率が有意に高かったことから、低温耐性は成虫で最も高まると考えられた。成虫を砂糖水とともに0℃、2.5℃、5℃、7.5℃、10℃でそれぞれ維持し続けたところ、生存率の推移は温度に依存し、0℃では15日間ですべての個体が死亡したのに対し、7.5℃以上では60日後も生存する個体が確認された。また、5℃処理において成虫を毎日24時間のうち1時間だけ20℃に晒すと、その生存期間は有意に延長したことから、一時的な高温による冷温障害の回復も確認された。本講演ではこれら結果に基づく国内での本種の越冬リスクについて考察する。