日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 生理学・生化学・分子生物学

2024年3月31日(日) 13:30 〜 14:30 D会場 (白橿2)

14:15 〜 14:30

[D-47] チョウ目昆虫で遺伝的メスを検出するW染色体特異的DNAマーカー探索の試み

Achmad Gazali1、小林 功1、新津 修平2、◯杉本 貴史1 (1. 農研機構・生物機能、2. 東京都立大・理学研究科)

チョウ目の多くの種ではZW/ZZ型の性染色体構成を有し, W染色体を持つZW型はメスに, W染色体を持たないZZ型はオスに分化する. カイコガにおける知見では, W染色体は全体にわたって転移因子様の配列が折り重なって蓄積した“転移因子の入れ子構造”で満たされており, 機能する遺伝子配列をほとんど持たない. そのため, W染色体は性決定システムの複雑な進化の過程で重要な役割を果たしてきたと推定されるにも関わらず, 多くのチョウ目において特異的マーカーの探索が困難であり, ブラックボックスとなっている.
 講演者らは, フユシャクガ類の一種であるフチグロトゲエダシャク Nyssiodes lefuarius (Lepidoptera, Geometridae)を対象に, NGSによるRNA-seq解析を通じた雌雄比較を通じて, メス特異的なコンティグをスクリーニングした. 次に, 雌雄それぞれから抽出したDNAを鋳型として, これらのコンティグから作成したプライマーによる診断PCRを行ったところ, 1つの組み合わせでメス特異的な増幅産物が得られた. 本手法はある程度のNGSデータの蓄積があれば, 汎用的に使える手法であると考えている.