The 84th Annual Meeting of the Entomological Society of Japan・The 68th AEZ annual meeting

Presentation information

Oral presentation

[E] Chemical ecology, bioactive substance

Fri. Mar 29, 2024 1:30 PM - 4:15 PM Site E (Meeting Room 1)

1:30 PM - 1:45 PM

[E-01] キタキチョウによるカタバミに対する誤産卵の化学的根拠

Yuta Takatsuka1, Naoki Kanazawa1, Shinji Ohta1, ◯Hisashi Omura1 (1. Hiroshima Univ.)

キタキチョウはしばしば、幼虫が摂食・成長できない非マメ科植物へ“誤産卵”を行う。カタバミ類はその一例である。本研究ではカタバミからキタキチョウの産卵を制御する植物化学成分を探索した。新鮮葉のMeOH抽出物、そのCHCl3・i-BuOH・H2O画分に産卵刺激活性はないが、H2O画分を逆相カラムで分画した最高極性のサブ画分1に弱い活性が見られた。このサブ画分1をイオン交換カラムで分画すると、酸性画分Aに比較的高い活性が見られ、酸・中・両性画分A+Nおよび中・両性画分Nにはほとんど活性がなかった。化学分析の結果、画分Aには、本種のマメ科寄主植物で産卵刺激物質として同定されたthreonic acid (TA)とerythronic acid (EA)が含まれていた。TA・EAは高等植物に広く分布しているため、これらを産卵に利用するキタキチョウでは誤産卵がより起こりやすいのかもしれない。一方、画分Nから同定されたarabitolとarabinoseは高濃度でTAの産卵刺激活性を拮抗的に阻害した。これより、植物の成長や環境応答にともない阻害物質の濃度が変化したり、メスの産卵が制限され阻害物質に対する感受性が低下したりすると、本種が誤産卵を起こしやすくなると考えられる。