日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] 化学生態学・生理活性物質

2024年3月29日(金) 13:30 〜 16:15 E会場 (小会議室1)

14:45 〜 15:00

[E-06] 屋久島種子島以北のボウランは性的なだましと異なる送粉システムを持つ

◯若村 定男1、新垣 則雄2、大池 昌裕1、森山 太介1 (1. 京都先端科学大、2. 沖縄県八重瀬町)

沖縄産のボウラン(Luisia teres)は、2,3-dihydoroxypropyl isovalerate (2,3-DHPiV)を放出して、リュウキュウツヤハナムグリ(Protaetia pryeri)やイシガキシロテンハナムグリ(P. ishigakia)の雄を特異的に誘引し花粉塊を運ばせている性的だましをしている。今回、各地のボウラン花について2,3-DHPiVの検出を試みたところ、トカラ列島宝島以南のものからは高率で2,3-DHPiVが検出されたのに対し、屋久島種子島以北では検出されなかった。2,3-DHPiVが検出されたボウランの分布は、両ハナムグリの本来の分布であるトカラ列島以南とよく対応していた。両ハナムグリの分布域外においてシロテンハナムグリ(P. orientalis)が高頻度でボウラン花を訪れ花粉塊を運ぶことを認めた。一部を採集したところ、雌雄両方がほぼ同数であった。また、ボウラン花上において擬交尾行動を示すものも視認できなかった。今回の一連の分析と観察から、屋久島種子島以北のボウランの花粉媒介者としてシロテンハナムグリが有力なこと、両者の関係が性的なだましではなく、宝島以南のボウランとは異なる送粉システムを持っていると考えられる。