日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] 化学生態学・生理活性物質

2024年3月29日(金) 13:30 〜 16:15 E会場 (小会議室1)

15:45 〜 16:00

[E-10] 宿主と環境の変化において防御応答の調整を担うハダニエリシター・テトラニン

遠藤 有希子1、田中 未来1、谷村 香織1、出崎 能丈1、上村 卓矢1、小澤 理香2、Maffei Massimo3、新屋 友規4、Galis Ivan4、◯有村 源一郎1 (1. 東京理科大・先進工、2. 京都大・生態研、3. トリノ大、4. 岡山大・IPSR)

植物は害虫が分泌するエリシターを認識することで防御応答を活性化することができる。本研究では、ナミハダニの唾液腺から分泌されるタンパク質である4種のテトラニン(Tet)の宿主植物におけるエリシター活性を解析した。結果、テトラニンの一つであるTet3は、インゲン葉において虫害初期応答である細胞質へのカルシウム流入を顕著に生じさせたが、Tet3以外のテトラニンは当該活性が弱い代わりに活性酸素種の産生を誘導した。また、揮発性化合物の誘導にはTet2が関わっていた。故に、4種のTetタンパク質は植物の異なる防御応答ネットワークに作用すると考えられる。さらに、インゲンで生育したナミハダニ(Pv-mite)では、ナミハダニが好寄主としないキュウリで生育したナミハダニ(Cs-mite)よりもTet遺伝子の発現量は高かった。Pv-miteに食害された植物では、Cs-miteの場合よりも防御遺伝子の発現誘導等が亢進されていたことから、テトラニンは、寄主植物との適応にも関与することが示唆された。さらに、熱や乾燥ストレス下でもTet遺伝子の発現は著しく低下したことから、テトラニンは寄主を含めた環境変化において防御応答の調和を担う因子であると推測される。