日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] 毒物学・殺虫剤作用機構・抵抗性

2024年3月29日(金) 16:15 〜 16:45 E会場 (小会議室1)

16:30 〜 16:45

[E-13] ナミハダニ染色体における殺ダニ剤抵抗性遺伝子の分布

◯刑部 正博1 (1. 京都市)

ナミハダニは上市された殆どの殺ダニ剤に抵抗性を発達させ、複合抵抗性の様相を呈している。一方、抵抗性研究では個々の抵抗性機構や作用機構が類似した薬剤間の交差抵抗性の解明に注力され、複合抵抗性や抵抗性の発達(遺伝子頻度上昇)機構に対する注目度は低いように思われる。演者ら(Sugimoto et al. 2020)はマイクロサテライト(SSR)を指標として連鎖地図を作成した。そこで先ず、連鎖地図上の位置(組換価)と海外で作成された物理地図による物理的距離との関係を調べた。一般的にモノセントリック染色体では動原体付近で組換価が低下するが、ホロセントリックなナミハダニ染色体(n = 3)ではいずれも物理距離と組換価の間に直線的傾向が得られ、均等的な組換が示唆された。最長の染色体(CRM1)には多くの解毒酵素シトクロムP450(CYP2 clan)、カルボキシルエステラーゼ(CCE)、グルタチオンS-転移酵素(GST)遺伝子が分布し、特にCYPは7割(27/38)が存在した。CRM1にはMETI-IおよびII、発育阻害剤、マクロライド剤、脂質合成阻害剤などの変異した作用点や解毒酵素の遺伝子が多く存在することが分かった。これら遺伝子の連鎖が(複合)抵抗性の発達に影響を及ぼす可能性について議論したい。