日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 環境・多様性・保全

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 G会場 (小会議室8)

09:00 〜 09:15

[G-16] ライトトラップによるニホンヤマネGlirulus japonicusの生息地における昆虫相調査と食物としての利用可能性

◯磯村 晃良1、細井 栄嗣2 (1. 山口大・農、2. 山口大・大学院創成科学研究科)

ニホンヤマネGlirulus japonicus(以下ヤマネ)は昆虫や液果を採食し、落葉広葉樹林を好むとされている。しかし山口県での生息確認はスギ人工林内が多い。本研究は人工林におけるヤマネの餌資源量を明らかにすることを目的としてライトトラップを用いた昆虫相調査を行った。
調査は2023年の7~10月にかけて月1回行った。白布をヤマネ生息地内の林道終点に張り、白色光とブラックライトを白布上部に設置しさらに白熱電球を前面地上に置いた。日没1時間前から照射を開始し、調査は1回につき6時間行った。昆虫は1時間ごとに回収し目別に飛来数を数え一部は種同定を行った。
その結果、燈火に集まるとされるほとんどの昆虫類を採集できた。飛来数のピークが目立ったのはキジラミ類やヨコバイ類などであった。これらは広葉樹の葉裏に大量に寄生することから、ヤマネの主要な餌となっている可能性がある。採集された目別で見ると飛来数のピークは7~8月に集中しており、ヤマネは夏に昆虫の採食割合が増加することから、飛来数と相関があることが示唆された。人工林の昆虫相の種多様性は広葉樹周辺で高まるとされ、本調査地においても間伐など施業の際に中層・下層の広葉樹を残すことで、ヤマネが餌を入手しやすい環境に整えられると考えられる。